ハウディー!テキサスはオースチンよりお届けしております。
2016年度SXSWはまもなくキックオフです!

そこでまずは、2015年度SXSWで当ブログのゲストライターになってくれた佐々木敦氏によるまとめをおさらいしましょう。

2015年度キーワード:Identity
主にAI(人工知能)、ヒューマノイドロボットなどのジャンルで頭をもたげたテーマです。
(セッションカテゴリー的にはArt, Science,inspiration と Intelligent Futureのカテゴリー)

大きく2点挙げると
・いわゆるコミュニケーションロボット領域での進化が、自分の分身のヒューマノイドの次元まで発展したときに、自分自身のidentityはどうなるのか?(不死のこと、ヒューマンコピーのこと)そもそも、ロボティクスの進展は人間にとってGoodなことなのか?
・ソーシャルメディアの拡張で、自分のidentityがより分裂していかないか?
というポイントがあります。

<ヒューマノイドとAI、コピーされる自分>
②Disrupting Human Being でも書いた通り、Rothblatt氏のヒューマノイド・マインドクローンをめぐる講演のベストスピーカー受賞、アンチロボット/AIデモの思わぬ波紋などは、底流するメンタル状況の大きな表れと思えます。AI+ロボットで人間のクローンが作れるとなったら、自己とか自我って一体何だよ?って話になってきますよね。BINA48を作ったRothblattさん側はともかくとして。。自分の分身が出来つつあって、ひょっとしたらクラウド上で不死身になっちゃうBINAさん、彼女は一体どう感じているんでしょうか。。。

ちなみに、こちらにRothblatt講演のすばらしい全訳があるので、興味のある方はぜひ。
http://wsc.hatenablog.com/entry/2015/04/27/085652

※BINA48

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AIといえば今年のFeatured sessionでは、世界的ロボット学者・石黒浩教授が登壇しますね
セッションでは教授自身のアンドロイド「ジェミネイドHI-4」と対話しながら、「人間とは何か」を紐解いていきます。

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また、今年のJAPAN HOUSE@SXSW2016でも登場!石黒教授と共にAnthony Bourdainを迎え、Extension of Humanity -人間性の拡張-をテーマに「ロボティクス」「AI」「医療技術」「モビリティ」「エンターテイメント」の5分野に渡る多彩なコンテンツを提供します。詳細はこちら

2015年度傾向:<ソーシャルメディアの拡張=ソーシャル自我の量産へ>
また、ジャンルは少し逸れますが、自我って話にはソーシャルメディアの拡張も絡んできます。
本年のSXSWで最もホットなサービスになった自撮り(セルフィー)動画キャスアプリのMeerkat。あるいは出会い系アプリのTinder。その他含め、ソーシャルメディアでのいわゆる「ソーシャル自我」はますます肥大化していきます。
(ちょっと大げさか。。)
それにしても、参加者のMeerkatとTinderやってる率はすごかった。来年はさらに別のものが台頭しているんでしょうけど。。

※Meerkat

meerkat

2015年度キーワード:Human Centered

こちらは主にウェアラブル(ファッションを含むSXstyle)やメディカル、IoTの分野で色濃く主張されていたワード。

大きく2点挙げると
・特にウェアラブルやメディカル、プロダクトなどでは「自分へのフィット感」が機能以上に大事。そこを忘れているセンシングサービスは支持されない。
・IoTの態度って、人間もThingとして捉えている。これって納得できん。

という感じです。ヒューマンセンタード。あくまで人間が中心でなければダメよと。

2015年度傾向:<IoTは不可視であれ、フィット感がサービスを決める>
IoT、特に人間のバイタルデータなどを取得する「ウェアラブル領域」のセンシングについて。

これまで、どうしても真尺にあわないデバイスをつけさせられたり、着にくいものを着用しないと、みたいなことが多かったこの領域ですが、、、

これを象徴するのがこちらのスタートアップ。
※Moonlab
http://softspot.io/

センサーがウェアラブル用に編み込み可能な繊維状の素材で作られています。汎用として様々なウェアラブルファッションに応用可能です。

③で触れたとおり、セッションでもウェアラブルという言葉が「最低限の着用可能さ」みたいな感じで理解されてしまっていて、「着やすさ、心地よさ」の方は全く追求されていない!多くのスピーカーがこのことを問題にしていました。

2015年度キーワード:Prediction

これはアドテクノロジーのカテゴリーでかなりのキーワードでした。プレディクション、つまり予言です。

以下がポイント。
□ビッグデータとか言ってないで、次に行こう。予測だ。企業戦略も都市計画も、ヤツが次に何を買うのかも、全部予測の時代。

□Netflixヤバそう。

では以上2点をまとめて。

<全てが予測へ>
ビッグデータ蓄積/解析
→アルゴリズム
→レコメンデーション(のA/Bテスト)
→パーソナライズ成功
→予測
という順番にコトは進みます。
まあ世の中そう簡単にそうはなってませんが。。

この予言がパーソナルな局面、企業の事業展望の側面、都市計画の側面、様々なことに応用されつつある状況が話されていました。

パーソナルな局面では②で記したFacebookのエッジランクやgoogleのアルゴリズムによる、人間の日常アクティビティの解読。
あるいは、Netflixのコンテンツレコメンデーションによる、コンテンツ嗜好性の解読。
これらは方向は違えどパーソナライズを目指す動きでしょう。
特にNetflixは利用者の8割近くがオススメされたコンテンツをみているとの報告もあります。ここまで来ると、もうプレディクションが出来るフェーズに来ているのかも。
Netflixは自社ドラマも作り始めていますが、これなどはみんなの嗜好性を把握して制作する、まさにデータドリブンなコンテンツそのものでしょう。ハリウッドの映画も少なからずシナリオ段階でデータ予測をして制作しているようです。

都市計画については、オースティン市の取り組みが紹介されていました。過去データを元に、未来予測をして先手を打つ、これもデータドリブンな行政計画。テックに強いテキサス大オースティン校とタッグを組み、UT Villageというチームを組織。チームは3D都市地図に時間軸を持ち込み、今後予想をしやすい視覚プラットフォームを作っています。最近話題のリンクト・オープンデータ(LOD)の良い活用例、とも言えそうです。

なんかまあ、パーソナライズ次元だとすると、この辺のことまでされたら流石に嫌ですが。。都市くらいの次元だと許せるっていう、、この感覚はなんなんでしょうか。都市を構成するのは結局我々だったりするのに。
幸せに生きたいならお前のデータをオープンデータとして出せ、巨大脳で予言してやるぞ、みたいなことになって行く方向でしょうか。
色々モヤモヤしますがプレディクション。

2015年度キーワード:Radical Breakthrough

ちょっとキーワードの質が変わりますが、「本当に革命的インパクトをもつテクノロジーってどの辺だったか?」
です。

3つあげようと思います、Google、合成生物学、Pixie Dust。

□Google
まずはジャイアントのGoogle社。毎度おなじみのAstro Teller氏(勿論ペンネームです)率いる未来プロジェクトラボ、GoogleXのキーノートからいくつかを。

※project loone

google-project-loon-designboom00

□合成生物学 MIT
MITメディアラボの伊藤襄一氏を中心に、シンセティックバイオロジー(合成生物学)のセッションも行われました。

要は遺伝子解析などから、生物のもつシステムを解明=リバースエンジニアリングし、そのシステムをハックして現実社会の課題(特に当面は医療など)に応用する分野です。遺伝子の組替え、操作も当然入ってきます。

発光する植物を作ったり。。

eye

□Pixie Dust
現代の魔法使い、と呼称される東大博士(今春から筑波大助教)の落合陽一氏のプロトタイプ。なんとまだ27歳にして、IoTはもう古い、21世紀は人間が主役でモノが動く時代、というビジョンで最先端技術でアートをモノす。。こういうものです。

※Pixie Dust

空中に音場を作り、コンピューティングで物体をピタリと浮かせたり、応用で空中に触覚を作ったり、スクリーンを作ったりと、まさに魔法のような技術のプロトタイプが展示されました。(実際展示したのは浮くやつ)
トレードショーに出品されてたのですが、観客はちょっと理解が追いついてない感じでした。
でも今後を考えると、全てが先のIoEになれば、、、仮に脳味噌センサーができたら、、バンバンものが浮いたり、物質の組成が目の前で変わったり。。しかねませんね。いやまあ、大きく考えれば、です。でもその方向で進んでいくような気もします。
凄いです。そして落合さんのキャラはもっと凄いので興味ある方は色々見てみてください。

→世界を知能化する脳の開発
→コンピューターを凌駕するかもしれない生物学
→物体が我々の意思で動く?時代

これぞ未来ですよ。

2015年度キーワード:Hack the Show

最後に趣の違うキーワードを。
2015年度SXSWは結構ハックされてました、という話です。すみませんセッション関係ありません。。

□Meerkat
上記で触れましたが、今年のSXSWで一番イケテたサービスは?ということではみんな(米国人は)Meerkat!ということになってました。
仕組みは、放送し終わったら消滅するツイキャスです。以上です。なんで流行ってたのかは、、、わかりません。
SXSW開幕の2週間前にリリースし、SXSWで大ブレイクしましたが、これトレードショーにもピッチにも出していません。逆にそういう正規の手続きを踏まずに、数万人が集まるSXSWというイベント自体をハックしてブレイクしたという感じ。サービスの特性と掛け合わせ、非常にうまいことやりました。

□tinder
上で触れた、EX machinaのプロモーションに出会い系アプリTinderが使われていました。これは既報で色々載ってます。
http://adgang.jp/2015/03/90790.html

□デモ(tenthbit社のアプリCoupleのプロモーション)
何度もすみませんが、これもですね。会場外で仕掛け、想定外にバイラルしてしまった感じです。

さて、2016年度も何かのサービスやアプリにハックされるのでしょうか?
引き続き現場よりレポートしていきます!