SXSWはもとより、主に米国発の新興スタートアップ系イベントでは、「disrupt(=崩壊させる、壊す)」というテーマワードをよく使います。
ざっくりいえば、既存の利権や枠組を壊し、新たなイノベーションを興す。そして社会を進化させる、という意味です。

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※SXSW会場

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※セッション
When algorithm attacks
ネットやIoTの空間で、我々が触れる情報はすでに、アルゴリズムによってどんどん規定されて来ている

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※セッション
Human and Robot: Friends or Foes in the Digital Age?
ホワイトカラーを失業させ、はるかに高い知能と肉体で人間を圧倒しうるAIロボットに、未来の我々はどう対峙するのか

 

SXSW2015では特にスポーツ、ファッション、食の分野でのdisruptがトピックになっていました。しかしながら、実は一番底流で発生していたのが、AI(=artificial intelligence、人工知能)やロボティクスの進展による「human vs machine」のテーマです。

こうしたセッションに参加して、遂に<disrupt human being>のフェーズに来ているな、という印象を受けました。そんな言葉はないのですが。。

AIやロボットで間違いなくイノベーションは起きます。が、さて?それが社会正義に貢献するのか?それで人は幸せになれるのか?

誰にもわかりませんが、今までの人間の肉体、寿命、脳、行動といったものがdisrupt=破壊され、新しい生き方へとイノベートされる歩みは止まらないでしょう。

それを象徴する2つの出来事がありました。

1つは今年のSXSWのベストスピーカーに選ばれたのが、United Therapeutics CorporationのMartine Rothblatt氏だったこと。全米の女性実業家トップの年収(38億)である彼女は、元々男性で性転換をし、またパートナー女性Binaのヒューマノイドロボットを作ったことで知られています。


※Bina

彼女のキーノートスピーチ
“AI, Immortality and the Future of Selves” keynote (interviewed by Lisa Miller, New York Magazine)
では、もはや人間の意識はデジタルアーカイブ化され、永遠に生き続けることが可能であること、が語られました。
同時に、その世界を肯定的に捉え、そうした<終わりなき人生>を選択できる世界への希望が語られました。

 

もう1つが、SXSWのメイン会場横で2日目に起きた、アンチAIロボットを掲げる<Stop the robots>のデモ行進です。小規模でしたが、多くのメディアに取り上げられていました。

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(Photo: Jon Swartz, USA TODAY)

リーダーは地元テキサス大のエンジニア系学生とされ、テクノロジスト側からの危機意識もここまで来ている!とABCや英BBCが飛びついたこともあって、かなりの話題になりました。

で、実はみんな騙された(私もまんまと騙されました)ーーこのデモはフェイクでした。
全米で沸騰中の、デートアプリにTinderというものがありまして、
アルゴリズムに任せて周囲からお相手を探す仕様なのですが、このTinderを標的にした、ライバルデートアプリのプロモーションだったのです。
彼らは機械アルゴリズムではなくて、友人たちのヒューマンセンスでマッチングさせる仕様の、対抗デートアプリを作ったのです。
そのためにプロモーションとして反アルゴリズム、反AIロボット感情に訴求したら、、、

あまりに反響がありすぎてマジでビビった、と本当の主催者tenthbotのCEOは語っています。

ちょっと火を付けるだけでこうなるのも、ホットなトピックならではの裏返し。肯定するのか、反対するのか。それぞれの立場や価値観でスタンスはさまざま。SXSWのミッションであるSocial Goodとの整合は?来年以降も問われるテーマでしょう。

人工知能系のセッションには多くの企業担当、研究者も視察しに来ておりQAも白熱していました。

このように、SXSWのセッションは地下水脈として、今後アウトプットされていくプロダクトやサービスを占っているように感じました。