【カンヌ2015】四日目 RADIO、DESIGN、PRODUCT DESIGN、CYBERの受賞者発表
早いもので、カンヌも折り返し地点。
昨夜も受賞作品が沢山発表されました。
授賞式が4回もあって、その度に相当数の受賞作品が紹介されて、これらを1週間程度で審査する審査員たちはなんてタフなんでしょう。
【RADIO】
1720のエントリーの頂点に立ったのは、
The Berlin Wall Of Sound/ SoundCloud “The Most Unbearable Radio Ad”
ベルリンの壁が崩れて今年で25年。冷戦終結まで、西ドイツに逃れようと壁を超えようとして犠牲になった人が沢山いました。The Berlin Wall of Soundは、犠牲者を追悼する目的で、ベルリンの壁を音声で表現したものです。7分32秒という音声の長さは、実際に155キロもあるという壁の端から端までを音が移動したときの時間です。サウンドウェーブは、壁の高さ、見張り台の高さを表しています。”Unbearble”とは、堪え難いということ。境界線を守るようにと説く当時の政治家の声や、壁を超えようとした人を撃つ銃声音が入っており、決して耳に心地よいものではありません。
かつてのベルリンの壁近くのデスゾーンに拠点を置くSoundcloudにとって、このプロジェクトを実行することは必然でした。ラジオというよりも博物館の音声資料を聞いているようだった審査委員長のWHYBIN TBWAのPaul Rearsonは言います。オーディオやラジオとの向き合い方が変わりつつある今、Soundcloudは、あらゆるレベルでリスナーに共感してもらえることを証明した点が評価されました。
タイトル:The Berlin Wall Of Sound/ SoundCloud “The Most Unbearable Radio Ad”
クライアント:Soundcloud
代理店:Grey Germany Dusseldolf/ Grey Germany Berlin
【DESIGN】
Volvo UK “Lifepaint”
Promo& Activationに続いて2つ目のグランプリを獲得。
スプレーは一度吹きかけると1週間はもつとのこと。自転車乗りのために開発されたものではありますが、ベビーカー、子供のリュック、犬のリードなどにも活用できます。グランプリを選ぶにあたり、スタイルを超えて、問題を解決し、世界をよりよくするというデザインの原点に戻ろうとしたと審査員であるInterbrand GroupのAndy Payneは言います。文化を変えてしまうほどのインパクトがあり、またポスターやパッケージングに留まらず、イノベーションやプロダクトデザイン、体験、デジタルなどが全て入っていた点が良かったとのことです。
タイトル:Lifepaint
クライアント:Volvo UK
代理店:Grey London
デザイン部門は、日本からも沢山の作品が受賞していました。
*ゴールド
-East Japan Railway Company “Get Back, Tohoku.”
-Issey Miyake Inc. “Pleats Please Flowers Series Posters”
-Tokio Marine Nichido “Junior Swimming Championships”
*シルバー
-Keio University “Pearl”
-Tokio Marine Nichido “Junior Swimming Championships”
-Suntory Holdings “Japanese Harmony”
-Makoto Azuma (Botanist/ Flower Artist) “Exobiotanica”
-Quiksilver Japan “True Wetsuits”
*ブロンズ
-Mori Building “Flower Lush In Roppongi Hills”
-Yoshida Hideo Memorial Foundaiton/ Advertising Museum Tokyo “Iron Mind”
-Honda Motor Co. “Honda. Beautiful Engines.”
【PRODUCT DESIGN】
今年で2年目というこちらの部門でグランプリを受賞したのは
Lucky Iron Fish “The Lucky Iron Fish Project”
カンボジアでは慢性的な鉄分不足により、貧血症が深刻な問題となっていました。鉄分を取ってもらうためには、調理の際に鉄を一緒に鍋に入れてほしい。けれども鉄の固まりをそのまま食べ物に入れたがる人などいません。そこで、現地では幸運のシンボルと言われる魚の形の鉄を作ったのです。これにより、調理の際に、鍋に鉄を入れることに抵抗がなくなりました。
鉄の魚を入れることにより、1日に必要な鉄分の摂取量の75%をカバーできるまでになりました。
もっともローテクでありながら、人の行動に影響を与えるプロダクトデザインとして高く評価されました。
タイトル:The Lucky Iron Fish Project
クライアント:Lucky Iron Fish
代理店:Geometry Global Dubai
【CYBER】
事前の予想でも有力候補の1つと言われていたUnder Armour “Gisele Bunchen – I Will What I Want” が受賞。
今年のカンヌは、GLASS LIONの設立にしても、受賞作品にしても、女性の権利をサポートしたものが目立ちます。
トップモデルのGisele Bunchenをイメージモデルとして起用したことに対して、ソーシャルメディアを通してUnder Armourに寄せられた賛否両論のコメントを背景に、彼女がトレーニングしている様子が見られる作品。これまで男性的なイメージがあったUnderArmourの方向転換が見られるだけでなく、周りの雑音などは気にせず、ただひたすらに自分を信じて進むことの大切さを解いています。CYBERでの受賞となったのは、テクノロジーを通したゲームチェンジが見られたからと審査委員長IsobarのJean Linは言います。ブランドがマルチスクリーンで生きて、成長することを促すアイデアだったということです。このキャンペーンはソーシャルという特徴を持ち、またデザインもリアルタイムで行われたという点を評価したとのことでした。
タイトル:Gisele Bunchen – I Will What I Want
クライアント:Under Armour
代理店:Droga5 New York
日本からの受賞は:
*シルバー
-Japan Sport Council “Reviving Legends”
*ブロンズ
-Japan Sport Council “Reviving Legends”
-Sports Biz Co. “Fencing Visualized”
-The University of Tsukuba’s Special Needs Schools “Eye Play The Piano”