【SXSW2015】インタラクティブ部門⑤ 我々としてのSXSW2015キーワード<前編>
事業開発部の佐々木です。(所属が変わりました。4月をまたいで報告記事をあげているとこういうことになってしまいます)
最終回、AOI Pro.視察チームとして総括した、オリジナルのSXSW2015キーワードをいくつかあげていきます。
とはいえ、既に今年の色んな報告会でも言われている通り、SXSWはまあカオス。だから見る人によって全く印象に残るポイントが違うと思います。ですのであくまで参考まで、ということで。
(あまりに長くなったので前編後編に分けます)
□Identity
いきなりムワッとしたキーワードでアレですが、、、
主にAI(人工知能)、ヒューマノイドロボットなどのジャンルで頭をもたげたテーマです。
(セッションカテゴリー的には
Art, Science,inspiration と Intelligent Futureのカテゴリー)
大きく2点挙げると
・いわゆるコミュニケーションロボット領域での進化が、自分の分身のヒューマノイドの次元まで発展したときに、自分自身のidentityはどうなるのか?(不死のこと、ヒューマンコピーのこと)そもそも、ロボティクスの進展は人間にとってGoodなことなのか?
・ソーシャルメディアの拡張で、自分のidentityがより分裂していかないか?
というポイントがあります。
<ヒューマノイドとAI、コピーされる自分>
先の②Disrupting Human Being でも書いた通り、Rothblatt氏のヒューマノイド・マインドクローンをめぐる講演のベストスピーカー受賞、アンチロボット/AIデモの思わぬ波紋などは、底流するメンタル状況の大きな表れと思えます。AI+ロボットで人間のクローンが作れるとなったら、自己とか自我って一体何だよ?って話になってきますよね。BINA48を作ったRothblattさん側はともかくとして。。自分の分身が出来つつあって、ひょっとしたらクラウド上で不死身になっちゃうBINAさん、彼女は一体どう感じているんでしょうか。。。
ちなみに、こちらにRothblatt講演のすばらしい全訳があるので、興味のある方はぜひ。
http://wsc.hatenablog.com/entry/2015/04/27/085652
(坂本さん、ありがとうございます!)
※BINA48
会場のホテル群からほど近くに6th通りという繁華街があって、夜は参加者でごった返すのですが、そこでインタラクティブの参加者と思われるグループが酒を飲みつつこのテのテーマで話をしているのに何度か遭遇もしました。
FilmでもこのテをテーマにしたEX-machinaが上映され、話題となっていました。(広告的にはこのプロモが話題になっていました※リンク)
日本でも年明けに未来予想の番組が放映されましたが、ロボットの進展やAIによるシンギュラリティ(人工知能の知的肉体的能力が人間を圧倒する転換ポイント、2045年に来るなどと言われていますが)のことが、巷でも大きく話題になっていますね。このことともクロスしている感覚なのでしょう。
ただ補足しておくと、人工知能が出来ることってちょっと過大評価されすぎていて、バズワードになり過ぎてる感もありますね。それでも、そこに関心が向かうこと自体は大事かなと。
ところで、今年は日本からのロボット系出展も盛んでした。日本のロボットって、主人とはちゃんと分かれた、まあ下僕的な、可愛げのあるものが多いんですよね。。つまりあくまで主人がコントロールできる存在。可愛い。全然怖くない。
でもBinaはなんかそこが違います。自分との境がなくなる方向。そもそもなんか先天的に不自然で怖いわけですが、そのうち全く問題無く共存するのかもしれません。まあ少しモヤモヤします。
※自分がもう一人、みたいな方向は日本では石黒先生方向でしょうか。あるいはAsunaとか。。
<ソーシャルメディアの拡張=ソーシャル自我の量産へ>
また、ジャンルは少し逸れますが、自我って話にはソーシャルメディアの拡張も絡んできます。
本年のSXSWで最もホットなサービスになった自撮り(セルフィー)動画キャスアプリのMeerkat。あるいは出会い系アプリのTinder。その他含め、ソーシャルメディアでのいわゆる「ソーシャル自我」はますます肥大化していきます。
(ちょっと大げさか。。)
それにしても、参加者のMeerkatとTinderやってる率はすごかった。来年はさらに別のものが台頭しているんでしょうけど。。
※Meerkat
自分の別人格A、Bなどをソーシャルメディアごとに、あるいはいくつかのアカウントごとに作って管理し、自己承認のA/Bテストを繰り返す日常、みたいな。。で最終的にソーシャル疲れになるみたいな。。そんな現象がアメリカでもどんどん出てきて、セッションでも今後クローズアップされてきそうな気がします。
近い話は日本では既によく聞きますよね。この点でもソーシャルアプリ方面は日本、やはり最先進国かと思います。
まとめると、
→自分のヒューマノイドコピーができたり、クラウド上で仮想の自分が生き続けたりできるような時代(勿論まだ先の話でしょうが)への戸惑い
が出て来てますし、よって反動的なアクションも結構来そう。
でもテクノロジーは構わず進化を続ける。このことだけは間違いありません。
(自動運転にしても、ドローンにしてもそうですが、一般的にテクノロジーが先行して社会側の受け入れは後手後手に回ります)
→ソーシャル上で分裂する自我をどう定位させるかという次なる課題
(本当の自分をさらけ出せるようなネット上の場所が求められる?そんなサービスが出てくる?)
これも来そうだなと考えております。
とはいえ、フォローフォロワー0の鍵つきツイッターでいいのかも。。
□Human Centered
こちらは主にウェアラブル(ファッションを含むSXstyle)やメディカル、IoTの分野で色濃く主張されていたワード。
大きく2点挙げると
・特にウェアラブルやメディカル、プロダクトなどでは「自分へのフィット感」が機能以上に大事。そこを忘れているセンシングサービスは支持されない。
・IoTの態度って、人間もThingとして捉えている。これって納得できん。
という感じです。ヒューマンセンタード。あくまで人間が中心でなければダメよと。
<IoTは不可視であれ、フィット感がサービスを決める>
③のポーリーンヴァンドンゲンのところでも少し触れましたが、IoT、特に人間のバイタルデータなどを取得する「ウェアラブル領域」のセンシングについて。
これまで、どうしても真尺にあわないデバイスをつけさせられたり、着にくいものを着用しないと、みたいなことが多かったこの領域ですが、、、
これを象徴するのがこちらのスタートアップ。
※Moonlab
http://softspot.io/
センサーがウェアラブル用に編み込み可能な繊維状の素材で作られています。汎用として様々なウェアラブルファッションに応用可能です。
③で触れたとおり、セッションでもウェアラブルという言葉が「最低限の着用可能さ」みたいな感じで理解されてしまっていて、「着やすさ、心地よさ」の方は全く追求されていない!多くのスピーカーがこのことを問題にしていました。
※cone
これもちょっと面白いプロダクト。このスピーカーに気分を伝えると、数千万曲の中からこれどうでしょ?と勧めてくれるスピーカー。割とHuman Centeredな思想かもです。特に入力が声でいいところが。
<人間はThingじゃない>
IoTのセッションでも、人間はThingじゃないぞ!みたいな論調が多々あった印象でした。セキュリティで自分の情報を守る権利もあるし、モノみたいに情報を丸裸にされるいわれはないぞ!という感じですかね。
でも産業側は丸裸にして、精密なデータがもっともっと欲しい。
まだまだせめぎ合いは続くと。
資本的に産業側が勝ちそうな気がしてなりませんが。。
※Disconnect
https://disconnect.me/
あなたの履歴や興味を他のサービスに受け渡さないように遮断するアプリ。アクセラレーターアワード出品。
余談ですが最近IoEという言葉も出始めました。現在はさらに、モノの情報、人間の身体データ、ソーシャルデータが全てつながる巨大な地球データ、Internet of Everythingの時代に向かっていると。
まあその、Aさんが今どこでどんな気分で誰と会って何をしているか、なんかも明るく可視化してしまう、果てし無く透明なデータインフラ世界、みたいな感じでしょうか。
Human Centeredなデバイスたちの先にはそういうデータベースが。。
それって全体の仕組みとしてHuman Centeredなんでしょうか。
ううむ。モヤモヤします。
(後編に続く)