こんにちは。広報部の木村です。怒涛のようなカンヌでの1週間からもう3週間…記憶が薄れないうちに!

カンヌでリアルタイムというキーワードをよく聞きましたが、すごくクールな成功事例を交えて解説してくれたのがR/GA & Beats by Dreのセミナー「Building a 3 Billion Dollar Brand」でした!ニューヨークに本社を置くインターナショナルエージェンシーR/GAのセミナーは毎年人気だそうです。

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スピーカーは
・R/GA創立者、Bob Greenberg (登場はイントロだけでしたが…) <左>
・R/GA副社長/エグゼクティブクリエイティブディレクター、James Temple <右>
・Beats Electronicsチーフマーケティングオフィサー、Omar Johnson <中>

Beatsについて・・・ご存知ない方はこちらをご参照ください
ヘッドフォンやスピーカーなどで有名ですね。今年の3月にアップルが買収。買収額は、対1社としてはアップル史上最高の32億ドル。元々のタイトルは「10億ドルのブランドを作る」でしたが「30億ドル」に訂正されました!

Omar Johnsonは、上司にあたるDr. Dreの「音楽に革命を起こせ」という指令に「マジかよって思った。話が大きすぎた。それをやるには今から紹介する柱が重要だった」というエピソードと共に5つの柱を紹介。
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TRUTH: Beatsブランドの根本。「真実」を伝えることを恐れないこと。
CULTURE: Beatsにとってのカルチャー=音楽・スポーツ・ファッション・アート。
CREATIVE: アイディアのこと。発案者が新人でも関係ない。ベストアイディアが勝つ。
HUSTLE: てきぱきやる。使うお金で最大限の効果を生む。
FAMILY: ビジネスパートナーも家族だという意識。
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FAMILYというキーワードについては、「ただの表現じゃなく、食も睡眠も一緒、何をするにも本当に一緒。音楽に革命を起こすにはエージェンシーとの関係から根本的に変えなきゃ」とのことでした!

R/GAのJames Templeはこれを受けてちょっと過激なスライドを紹介。

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加工してしまいましたが。要するに「ブリーフなんか邪魔だ!」と。
BeatsとR/GAの”FAMILY”な関係は、”CREATE CULTURE”(カルチャーを創る)ためのもの。カルチャーは止まってくれない。ブリーフが何週間もかけて議論されて承認されてから作るようなやり方では、自分たちが求める”SUPER RELEVANT”で”SUPER TIMELY” (すごく関係性があってタイムリー)なものは生まれない!ということだそうです。

2013年のMTV VIDEO MUSIC AWARADSで、ロビン・シックとの共演の際にマイリー・サイラスが過激なパフォーマンスをして騒ぎになりましたが、「マイリーが何かやるらしい」と聞きつけた彼ら、数時間でそれをネタにしたCM を作り、マイリーのパフォーマンス後すぐのタイミングで放映したそうです。「MTVだからって準備に半年必要なわけではない。テレビでもネットでも、メディアの種類に関係なく、カルチャーのスピードでコンテンツを作ることが大切」とも言っていました。

Omar Johnson が紹介したREAL TIME CREATIVEの事例の中で印象的だったのはHEAR WHAT YOU WANTシリーズ。”rivalry moment”(ライバル意識が生まれる時)を利用したキャンペーンです。

聴きたいものを聴く、というコンセプトのもと、試合前に”聴きたくないもの”をシャットアウトして集中するアスリートにフォーカスしています。カメラマジックなどでカッコよく見せる工夫はしたものの、すべて本当の話だそうです。

ディレクターはPaul Hunter
起用されたのはブルックリン・ネッツのバスケ選手、ケビン・ガーネット。彼がボストンからブルックリンに移籍して間もない頃のニューヨーク・ニックスとの試合、”rivalry moment”を捉えて制作したとのこと。ライバルチームのファンが侮辱的な言葉やモノを激しく投げつけてきています。

ディレクター: Paul Hunter / BGM: ”The Man”, Aloe Blacc
サンフランシスコのアメフト選手コリン・キャパニックを起用。対シアトル戦の時に流して成功を喜んでいたら、シアトルのファンが「Beatsをボイコットしてやる!」となってしまい…そこで試合の2日後にシアトルのアメフト選手リチャード・シャーマンと契約、すぐにR/GAに電話、2日後に台本初校、その5日後に撮影という速さで次のバージョンを制作してしまったとのこと!”rivalry moment”捉えすぎです。

ディレクター: Noah Marshall
こちらは失礼な質問をしてくる記者が相手ですね。

REAL TIME CREATIVEと”rivalry moment”によって”conversation”(=会話)が生まれました。”Beatsの会話”にメディア、ファン、消費者が参加してくれたんです。このシリーズはテレビやサイトで取り上げられ、ソーシャルで話題になり、パロディが作られ、
・トータル表示数: 12億4千万回
・トータルYouTube再生回数: 1千10万回
・STUDIO(商品名)売り上げ前年同期比65%アップ
・2月のSTUDIO WIRELESS売上がBOSEのNo.1商品のヘッドフォンを抜く
などの大きな成果を生んだそうです。

最後に紹介されたのはワールドカップにあわせて制作された

ディレクター: Nabil Elderkin / BGM: “Jungle”, X Ambassadors & Jamie N Commons
負傷した上にチームも敗退してしまい悔しさでいっぱいだと思いますが、ブラジルのネイマールが試合前にお父さんと電話する姿、お父さんの「今日が人生最後の日だと思って走れよ。死に物狂いで幸せを追いかけるように走れ。家族や友達のために走れ。ハッピーになれ。サッカーを楽しむんだ。そして何よりもひるむな。神様がついてる。愛してるよ」という言葉、印象的ですね。各国の有名選手、Lil WayneやNicki Minajなども出演しています。

実際にピッチやフィールドに出るときは外されてしまうヘッドフォン。そこでBeatsは「スポーツの中での自分たちの居場所はゲームの前だ」と考え、”THE GAME BOFORE THE GAME”(試合前の試合)をコンセプトにしたそうです。性的な表現や宗教のことなどが含まれていますが、「多くのブランドはそういうものは排除してしまう。でもこれはBeatsのことじゃない。アスリートたちの本当の姿を伝えているんだからいいんだ」とのこと。

Beatsにとってのカルチャーは音楽・スポーツ・ファッション・アート。とてもシンプルです。そのカルチャーにBeatsが入り込んでいく、それがCREATE CULTUREの意味。潤沢な広告費があるわけではないのでミュージックビデオの監督などを起用することが多いし、大規模なキャンペーンもしないそうです。それでもMTV AWARDSやワールドカップなど、conversationが生まれるタイミングとツボを押さえて効果を生み、TRUTHを伝えることを恐れない姿勢が貫かれています。

クライアントとのFAMILYな関係から生まれるREAL TIME CREATIVEが作った”30億ドルブランドBeats”、次は何を仕掛けてくれるでしょうか。制作チームすごく大変そうですけど…!今後も楽しみですね!