目標は帰るまでに安定した小麦色肌にもっていくこと、どうも吉川です。

本日はカンヌ2日目ということだったんですが、おもしろいセミナーもりだくさんでした!!
その中でもぐいぐい引きこまれたのは『ゼログラビティ』の制作話をプレゼンしたセミナーでしたね。
見てない人のために『ゼログラビティ』のトレーラーを・・・

 

というまあびっくりするぐらい宇宙な映画なわけですが、
この制作秘話を語ってくれたのはこの映画のCGを手がけたFRAMEWORKというCG会社です。聞いてるうちに制作秘話というかだんだん苦労話に聞こえてこなくもなかったんですが。
こんな壮大な映画、問題が起きないわけがありません。

まず制作する前からいくつかの大きなリスクが見えてました。

○赤字になるんじゃないか問題
大前提として宇宙物は儲からないらしいです。それに加え、この映画の登場人物は2人。しかも大半は1人。しかもサンドラ・ブロック。最後のしかもは主観が入ってしまいました。これで収益率とれんの・・・?と。

○どうやって撮影すんの問題
宇宙ロケができるはずもなく。そもそも通常無重力状態を表現する時はワイヤーだったり、無重力機械みたいのに入って撮影が行われます。ただ今回それを行ってしまうと嘘っぽくみえてしまうため、環境全てをCGで作る必要がある、と。

○この監督ロングテイク好きすぎ問題
監督はAlfonso Cuarón。彼が撮った『トゥモロー・ワールド』などを見てもらってもわかるのですが、ロングテイク大好きなんです。

 

これ有名なロングテイクシーン。まあたしかにすごい。このテイク専用にカメラカー作っちゃうぐらいロングテイクにこだわりがあります。
この映画見てもらったらわかるんですが、
まず冒頭のシーンが20分ぐらいのロングテイクです。どえらい特攻隊長ぶっこんできました。それ以外にもロングテイクが映画ないで散りばめられていて、ワンテイクの平均が8分だとか・・・しかも映画全体のカット数が150カットぐらいで構成されてるとか・・・
なにが問題かっていうと、ロングテイク中にひいたり、よったり、カメラは縦横無尽に動いてます。そうなると、まず、通常行われるワイヤーも使えませんし、重力機械の中での撮影も絶対無理です。悪夢です。

これらの問題を解決には新しい発想と時間が必要なんですね。
というわけで、まずプランニングから開始。これがなんと1年続いたそうです。そしてより良い発想が生まれるように+時間を稼ぐためにスタッフがFRAMEWORKに移住です。ただ、プランニングに1年使ってしまったことで全体のスケジュールを圧迫するはめに・・・問題続きですね。

もろもろ話し合われ、結果、監督を説得しほぼCGで作る必要ことになりました。ただ大前提として、全てがフォトリアルでなければならないし、宇宙ドキュメンタリーのようにリアルでなければならない、と。
ほぼほぼCGで作られたわけですが、演者の顔だけはほとんどのカット本物です。ようは、カラダ、環境全てCGでつくり、顔だけを撮影し、あとから合成されました。

ただ、カットによって顔もCGで作らなきゃいけないこともありました。監督は生半可なCGじゃぁOKを出すわけがないので、フォトリアルな顔を再現できる技術を開発。感情によって顔の色や質感まで再現できるようなものができたとか。

この映画のために開発されたのはそれだけではありません。
これまでにないロボットカメラやロボットライティングまでつくりました。現状のモーションコントロールより速く、複雑な動きができるロボットカメラをクルマ生産などに使われているロボットを元に作ったとか。こんなん、

 

あとLIGHT BOXというものも開発されました。こんなん、

 

CGの世界ではライティングっていうのはとてつもなく大切です。ライティングによってリアルに見える化フェイクに見えるか決まってきます。100万以上のLEDでつくられています。このLIGHT BOXを使うことで、これまでできなかったような繊細なライティングが可能になりました。それだけじゃなく、ヘルメットとかの反射も生み出すことが!そしてなにより、周りの環境を映し出せるので、演技もしやすくなった、と。一石何鳥ですか。

それだけではなく、特別なワイヤーリグだったりソフトウェアも多く開発されました。
この映画撮り終わったからもう全部使われなくなってしまうのか?とんでもないです。他の映画でも使われるだろうし、映画以外でもこれらは使われます。
例えばこのCM、

これはオードリーがフルCGで再現されているのですが、ちゃんとゼログラビティの技術が応用されてます。
素晴らしい!!