カンヌ開催中、どのセミナーでも、毎日毎日朝から晩まで、広告…じゃなくて“クリエイティビティ”の様々な役割について話し合われていました。
〝広告“という言葉自体が、控えめに使われていたことが面白かったです。Cannes Lions Festivalの名称からも消えてしまったんですからね!まるでこの業界がやっていることはもはや広告ではなく、それ以上のもの、”Create(創る)”という事のようです!!皆がなんと呼ぼうが、メッセージを発信するのに使われているテクノロジーがなんであろうが、私にとってはいまだにそれは広告です!:)

今年のカンヌの中でも特別よかったのがTBWA主催のセミナーでした!広告界の歴史でも最重要人物2人を招いてのものでした!CLIO2013では Lifetime Achievement Awardを受賞したGeorge Loisと、2013 Cannes Lion of St. Markを受賞したLee Clow、2人とも生きる伝説です。

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2人が長年にわたって手掛けてきた仕事について話すのですが、本当に感激させられました!
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TBWA/Media Arts Labの会長でありMedia Arts for TBWA/WorldwideのグローバルディレクターでもあるLee Clowの1番知られた作品といえば、Steve JobsのAppleの為のマーケティングでした。このパソコンブランドを世に知らしめたCM“1984”や、劇的な方向転換をやってのけた1997年の“Think Different”キャンペーンが含まれます。

これまでで1番のCMという人も言います!
1984年のSuper Bowlで流れたAppleのCM:

けれど、私のように1980年代に高校生だったアメリカ人なら、George Loisの “I want my MTV!”のキャンペーンのことも憶えているでしょう!!今でも当時のタグライン”I want my MTV”を聞くことがあります!Lois は危機に瀕していたまだ新しいチャンネルを一躍有名にしました!キャンペーンはというと、MTVチャンネルを付け加えて欲しいとケーブルオペレーターに要求するよう促すものでした。

キャンペーンに参加した一部のアーティストのモンタージュです。

IWMM 1-4 1982-1983 from fredseibert on Vimeo.

Loisは、他にはEsquireの表紙を手掛けたことでも知られています。Esquireは、それまでのどの雑誌の表紙とも違うものを作り上げ、デザインのハードルを上げました!!New York’s MOMAに永久保存されています。
ここからはMOMAのウェブからの引用です:
1962年から1972年、George Loisは、雑誌のデザインというものを、92の表紙でもって変えてしまったのです。彼は、グラフィック的にシンプルにしながらも、ただフィーチャー記事をイラストレーションするだけではなく、概念が伝わるようにしました。Loisは、この大量に出回る雑誌の表紙によって、アメリカ人が当時抱えていた人種差別、フェミニズムそしてベトナム戦争のような問題を積極的に考えるよう促すことになったのです。こうやってまとめてみてみると、これらの表紙はビジュアルな年代記となって、1960年代の混乱が垣間見れる窓となっているのが分かります。当初、その先進性から理解されることがありませんでしたが、今やアメリカ文化のイコノグラフィーには欠かせないものとなっています。

彼のウェブサイトを是非見てみてください:
http://www.georgelois.com/esquire.html
そしたら、セミナーのポスターが何を基に作られたのかわかるでしょう!

この2人の性格は、まるで正反対!Lee ClowはMr.冷静沈着、それこそクールで落ち着いた(典型的なカリフォルニア)人。ところがGeorge Loisはというと、気が強くて、ウィットに富んで、ハイパーで、F@#%なんていう悪態をいくらでも使いたがるような人(典型的なニューヨーカー)!!これは私だけかもしれませんが、高名で年配の彼のような人が何度と無くFUCKと言っているのを見るたびに笑わずにはいられませんでした!彼は感じたままにしゃべる人であり、その言ったことが何をもたらすのかまで考えていないのです!!実際、彼はオーディエンスの中にいた若いクリエイティブたちが間抜けに、うぶに見えてしまうくらいの圧倒的な存在感を放っていました!

今日の広告の何が違うか問われた時に、Clowは、現在あまりに多くの接点とプログラムがあるため、ブランドに不満があると答えていました。〝ブランドは、自分の役割に徹底すべき“。そしてこうも付け加えていました。〝たった一つの、一貫したクリエイティブなメッセージを持っているブランドは少ない”

George Loisも同じ質問に、Xeroxを2度クビになったことを引き合いに、こう話していました。そのクライアントを失った理由というのは、まずは名前をXeroxに短縮するよう提案したこと、またもうひとつはプリント広告ではなく、TVCMをと提案したことだそうです。彼はその後、再雇用され、子供にコピーをさせることによってその簡単さを表現するCMを制作しました。このCMはFTC (Fair Trade Commission 公正取引委員会)に、事実を誇張しているとの指摘を受けたのですが、なんと今度はFTCを撮影現場に連れてきて、サルを主人公に撮ったのです。

サルを使った悪名高きXeroxCMがこちら!

彼が言いたかったのは、良い仕事をする為には我慢強くあり、簡単に物事をあきらめてはいけないということ。〝良いクライアントを持ちなさい。もし良い仕事をすることを邪魔するようであれば、FUCK them(くたばらせてやれ)“。FUCKという言葉を何回使ったでしょう、HAHA!

今日の広告では、テクノロジーが大きな部分を占めます!!シンプルなTVCMとプリント広告では済まされないのです!あらゆるメディアの中から、どれを使うべきか選択しなければならないのです!例えば、アプリ、インタラクティブサイト、マルチスクリーン、ETC!!!全てのメディアで一貫したメッセージを送るのはとても難しい!

今のアートディレクターと、テクノロジストの違いについて聞かれたClowは、“後者は運転席にいるが、それは長く続かない“と言っていました。“カメラが発明されたとき、画家が皆一様にブラシを放り投げて写真を撮り出す事なんてありませんでした。実のところ、テクノロジーは、アーティストがその使い方を知る前からあったのです。”
”私が思うにアーティストはまだ新しいメディア、インターネットの可能性や、またブランドを美しく知的に表現する為にどのようにしてこのテクノロジーを使用すればよいのか知らないのだろうと思います。テクノロジストが暫くリードをしていましたが、アーティストがそれを越すでしょう“

Loisは率直な人ですが、恐れたり、弱気になったりせず、またテクノロジーの奴隷になるなと、クリエイティブたちを諭していました。
“ゲームの名前はテクノロジーではありません。ゲームの名前はクリエイティビティなのです”
〝クライアントがいい作品を誉めていた時代はよかったでしょうねと言う人たちがいますが、わたしは 「何を言っているんだ?良い作品を作って、それを売る勇気を持て。売れるよう、全力を尽くせ」と言います。“

George Loisのインタビュー。〝もしクライアントが良い仕事をさせてくれないのなら、くたばれ!って言いなさい“ 勿論、実行するより言う方が簡単でしょう。わたしがそんなこと言ったら、職と失ってしまいます!! 🙂

2人はそれぞれ自身のキャリアの頂点について聞かれたのですが、Loisは”I want my MTV”のキャンペーンを挙げ、ミック・ジャガーを撮影のためにアメリカに呼び寄せた話をしました―これによって一晩で、この音楽チャンネルは大成功を収めることになったのです。彼は“素晴らしい広告は、このようなミラクルをマーケティングに起こすんだ”と言います。

ClowはもちろんAppleを挙げました。〝Steve Jobsは、テクノロジーがいつか全てポケットサイズになることを信じていました。彼はそれが起こることを25歳のときから知っていたのです。そしてどうしてか、みんなそれに乗りました。けれど、わたしが忘れることの無いのは1990年代後半の“Think Different”のコマーシャルキャンペーンですね。新しい声、そして新しいエネルギーをAppleに取り戻させ、そのデザイナーたちの素晴らしい働きを促したことかと思います。”

Apple’s Think Different

最近貰う名刺でよく見かけるのが〝テクノロジスト“という肩書き。この伝説的な2人から学んだ一番のことは、テクノロジーにゲームを支配させるなということ!HAHA!!