こんにちは、Aoi Pro.インターンのトニー・バンと申します。テンプル大学の3年目で映像を勉強しています。さて、今回紹介するのはユニークでとても興味深いCaine Monory(ケイン・モノリー)君の物語です。
すべての始まりは9歳の少年と彼の熱心なアーケードゲームへの愛。LA東部出身の彼は、アーケードゲームが好きすぎるあまり、ダンボールを使い自作のゲームセンターを作ってしまうのです。物語は2011年の夏、ケイン君が父のGeorge Monroy(ジョージ・モノリー)の中古自動車部品店を手伝うところから始まります。余った多くのダンボールもあったため、ケイン君のプロジェクトを認め、お店の一部分を彼の作業場として提供するジョージ。まさか、このプロジェクトが彼らの人生を180度変えることになるとは知るはずもなく・・・
そしてケインはShaky’s Pizza からもらったバスケットゴールとダンボールを使い、最初のバスケットボールアーケードゲームを作ります。実のところ、ケイン君はその年の6月に、1ゲーム1円で同じゲームを提供していたものの、全くお客は入りませんでした。

最初のアーケードゲームが完成してからも、ケイン君は新たな製作を続け、サッカーやクレーンゲームを含む合計6つのゲームを作りました。ゲームはどれも信じがたいクオリティーの高さであったものの、それでも3ヶ月もの間人々の目には留まらず、ケイン君は夏休みの間、自分が作ったゲームセンターの前に座り毎日誰か立ち寄るのを待ち続けました。そして8月、物語のターニングポイントでもあるNirvan Mullick(ニルバン・ムリック)がケイン君の初めてのお客としてやってきます。元々ドアハンドルを探してお店に入ったニルバンでしたが、彼はそこで見つけた未だかつて見たことないほど洗練されたケイン君のゲームセンターに驚かされます。この時、ジョージもケイン君もニルバンが映画監督であることは知りませんでした。ゲームで遊んだ後、ニルバンは後日またここに戻り、ケイン君についての短編映画を作ってもいいかとジョージに尋ねます。ケイン君に衝撃を受けたニルバンは、フラッシュモブキャンペーンを始動させ、LA中から人々を集めてゲームセンターへ行き、彼を驚かせる計画を立てます。この企画は見事成功し、完成した短編映画の再生回数もどんどん増え、ケイン君はあっという間に有名になっていくのです。

最初に短編映画を見た後、私は一瞬にしてこの若干9歳の少年に心を打たれました。映画はケイン君をはじめとするニルバンやジョージ君を有名にしたのはもちろんですが、この成功を一時のものとしないための行動も巧みでした。現在、第一弾に続く続編の短編映画がリリースされ、ニルバンとモノリー家はケイン君のための募金活動も開始。最初の目標であった2万5千ドルはあっという間に超え、約19万ドルに到達。現在も伸び続けているようです。なおケイン君のためだけではなく、この募金活動はGoldhirsh Foundationをも刺激し、手を組むことに成功。程遠い目標であったケイン君のような才能のある子供を手助けする募金活動も開始しました。このように、「Caine’s Arcade」は口コミやネットで広がるバイラルビデオの数々の中でも一番の成功例と言っても過言ではありません。

ほんの「一時の名声」に留まらせなかったニルバンとジョージにも感心しました。たくさんのサポートが得られるとわかったニルバンはもっと出来るはずと、自らの経験を生かし、巧みにキャンペーン活動を拡大していきました。ケイン君のためだけではなく、世界中の才能を持った子供達の将来のためです。

ビデオの反響は凄まじく、ケイン君に感化された世界中の子供や大人までもが自分たちの「楽しみ」を見つけ、各々のクリエイティブな作品やオンラインゲームを発信するようになりました。このような伝染効果が世界中で巻き起こる一方、ニルバンはこのあちこちから集まる人々の想像力を活かした、全世界の人々が参加できるイベントをやれないかと“Global Day of Play”(世界の娯楽の日)というキャンペーンを始めました。
このキャンペーンがこれだけ成功したのも、多くの企業家が様々な理由で始め、失敗していくビジネスとは違い、ただ楽しみたいという一人の少年から生まれたものだからだと思います。
USC Marshall School of Businessで行われたDavid Belasco氏とのインタビューで、Belasco教授はケイン君に「なぜアーケードゲームを作ったの?」と聞くと、ケイン君は「楽しいと思ったから」と答えました。
ニルバンもこのことに気づいており、この「ただ楽しみたいから」というアイディアを活性化させたかったということは言うまでもないでしょう。
多くの場合、私たちはいいアイディアを生み出すため創造力を働かせますが、今回のケースでは何百万人もの人々が夢をみる一人の少年の創造力に感化されたのです。

紛れも無く「創造力に感化された世界」の例と言えるでしょう。

written by Tony