広告における“次の大物”
皆さんこんにちは。AOI Pro. インターンのアヤナ・ダンと申します。もしまだ知らない方がいたら・・・アップルがスマートフォン市場を独占する日も終わりに近いかもしれません!
ただ、誤解しないでください!もちろんアップルが急にトップから陥落するわけもありませんが、アップルのホリデーセールに対抗したサムソン製品の特徴+おもしろい広告の仕方は成功を収め、どんどんと勢いを増しています。ここ最近のサムソンのキャンペーンはとても賢く、しかもその“賢さ”は言葉を使わずに表れます。
“The Next Big Thing is already here(次の大物は既にここに)”というサムソンのGalaxy S3のCM。このスポットではアップルの新製品を買うために気が遠くなるような大行列に並んで待つアップルファンをからかいます。アップルの新商品に夢中になりすぎるあまり、それより前に出ているサムソンのスマートフォンでは既に同じ機能があることに気づかないアップルファンを暗示し、これをサムソンはとてもクレバーにライバルの名前を出すことなく表現しています。視聴者は長い行列、白いイヤフォン、新機能について熱く語る人々を見てアップルだとわかるのです。
他にも一番最近の例だとスーパーボウルの第4クオーターで放送されたサムソンのCMです。サムソンはこのGalaxy Note IIとGalaxy Note 10.1のキャンペーンでジョン・ファヴロー監督とLA拠点の代理店72 and Sunnyを起用しました。ファヴローは大ヒットシリーズのアイアンマンの演出を手がけたことで有名になった監督で、72 and Sunnyはサムソンはもちろんのこと、ディスカバリーチャンネルやナイキ、ターゲット、Xbox 360等を主な取引先に持つイギリスの代理店。なんと72 and Sunnyは去年のAd Age(米国の広告・マーケティング誌)が選ぶ2012年のAリストエージェンシーに選ばれました。サムソンは試合の日より前からこのスーパーボウルCMのティザーを公開していました。
“The Next Big Thing is already here” Samsung Super Bowl 2013 ad
CMには俳優のセス・ローゲン、ポール・ラッド、ボブ・オデンカークに加え、NBAマイアミ・ヒート所属のレブロン・ジェームスがカメオ出演しています。ラッドとローゲンはこれまでにコメディで有名なジャド・アパトー監督の映画で数多く共演しています。
CMはローゲンとラッドがサムソンのロビーであろう場所で出会うところから始まります。どうやら2人は“次なる大物”になるサムソンの新しいCMに起用された様子。次第に2人はいかにお互いが“次なる大物”にふさわしくないかを侮辱し合います。
オデンカークが現れるまでローゲンはジャドの年齢をいじり、ジャドは彼のライフスタイルをバカにします。そして、オデンカークが登場すると、彼は両者ともコマーシャルに必要だと言って2人をオフィスに招き入れ、何かCMのアイディアはないかと尋ねます。2人はおもしろいアイディアを出し続けるものの、CMのスターはタブレットに映るレブロン・ジェームスに決まってしまいます。その後もローゲンとラッドは画面が暗くなるまでアイディアを出し続けます・・・
2人が出すアイディアは全て他のスーパーボウルコマーシャルを暗示する等、このCMもまた、他のCMを引用することで笑いをとっています。また、このCMはスーパーボウルの試合終盤で放送されたので、視聴者はどのCMが引用されているのかがわかるようになっています。
CMでセス・ローゲンが出すおむつのアイディアはE*Trade(米の金融機関)やKiaの SorentoのCMを引用しています。
E*Trade Super Bowl 2013 ad
“Space Babies” 2014 Kia Sorento Super Bowl 2013 ad
若者がやりそうなことを老人がやるというローゲンのアイディアはTaco BellのCM”Viva Young”から引用。
“Viva Young” Taco Bell Super Bowl 2013 ad
オデンカークはラッドにアジア人ラッパーを起用することを提案し、ローゲンはWonderful PistachiosのCMで使われているPsyのカンナムスタイルを踊ります。
“Get Crackin” Wonderful Pistachios Super Bowl 2013 ad
さらに、ローゲンはコンテストを開いてみんなにサムソンCMを応募してもらい、CMを作る手間を省こうと提案。これはドリトスのクラッシュスーパーボウルCMコンテストと呼ばれる、若手のアマチュア監督達にドリトスのCMを作ってもらい、勝者のCMはスーパーボウルの中継で流れるというキャンペーンから引用しています。
見事選ばれた作品はこちらから:
ラッドはローゲンがストリップしていくというFiat 500 AbarthのCMのコンセプトに似た案を出します。
Fiat 500 Abarth Super Bowl 2013 ad
最後に、オデンカークはバイラルビデオを作るというアイディアを提案。これは最近の流行で、数多くの企業がスーパーボウルCMを試合当日よりも前に公開し、SNS等を通してバイラルビデオになることを願いました。
このように、サムソンのスーパーボールCMは他のスポットを引用して笑いを取ってるので、今年の全スーパーボールのCMを見るまでは私も笑いどころがわかりませんでした。ただ、評論家の意見にもあるように、これはサムソンのCMというよりはプロダクト・プレースメントで、個人的には製品自体があまり取り上げられていない気がします。