キュートなクレイアニメで子供時代を描く! MV「La quête」
4月ももうすぐ終わりですが、すっかり春になりましたね!4月から新しい生活が始まったみなさんはそろそろ慣れてきた頃でしょうか。
さて、日本で卒業や入学入社の時期を迎えるこの時期は、自分の思い出を振り返ってしまう方も多いと思います。そこで今日は、なんだか懐かしい気持ちが湧いてくる、フランスのラッパー Orelsanの「La quête」のMVを紹介します!
Orelsanはフランスで2000年代から活動するラッパーで、この今日ではシングルチャート2位を記録するなど広く親しまれているアーティストです。(余談ですがフランスのヒットチャートには多くのラップがランクインしています!日本では「シャンソン」が知られているので初めて知ったときは驚きました!)
まず、ご紹介したいのはこの作品の見事な時間表現です。
この曲の冒頭の歌詞「Rien peut m’ ramener plus en arrière que l’odeur d’ la pâte à modeler(粘度の香りほど昔を思い出すものはない)」という」歌詞に因んでOrelsan本人が監督に直接にオファーを送ったところからこの作品は始まったそうです。しかし、ただ歌詞に合わせているだけ以上の効果を生んでいるように思います。
今回用いられたクレイアニメという手法ですが、例えば「ひつじのショーン」「ピングー」「ニャッキ」など子供の頃に私達が慣れ親しんだアニメに多く用いられています。また、粘土遊びそのものも、視聴者それぞれの五感の記憶と結びついて、懐かしい気持ちにさせられるのではないでしょうか。
そして、今作では少しぎこちなさの残る、ストップモーション感の強い雰囲気が採用されています。このカクカクとした感じ、早送りのように感じませんか? この早送りで昔の事を振り返るような映像表現と、合間に挿入される実写の自撮りパートでの時間の流れ方の対比が、より現在と過去の思い出の感覚を強調している印象があります。
では、この作品はどのように作られたのでしょうか。
特にストップモーションのアニメは時間がかかることで知られていますが、なんとこの作品は1ヶ月半で完成しました。クリスマス休暇の直前にオファーが届き、準備に20日撮影に10日編集に2週間というかなりタイトなスケジュールだったそうです。
また、撮影時には「自撮り風」に見せることに苦労した模様。作中でOlelsanが自撮りをしている部分は実際に本人がカメラを持っているのですが、アニメパートと繋げるために所定の位置にカメラを設置しなくてはなりません。ショットによっては覗き込むような位置にカメラを置く必要があり、その撮影にはテイクを重ねたようです。
また、全編本人が操作を行っているように見えるのですが、実は人形を動かしているのはVictor Haegelin監督。ちょうどOlersanと背格好が似ていて、よく見ないと気がつかないですよね!
こちらにメイイングがあるので、ぜひ覗いてみてください!
最後にVictor Haegelin監督を紹介します。
フランスで活動する彼は、チェコプラハの名門フィルムスクールFAMUでアニメーションを学び、その後2008年に監督した「JAZZ」(Radio Nova)で賞を受賞。以降、マクドナルド、キットカット、ディズニーなど様々な企業とコラボし作品を制作しています。クレイアニメに限らず実写のストップモーションや、様々な手法のアニメーションの組み合わせにも挑戦されている注目の監督です。
いかがでしたか?もし自分の過去をアニメにするなら…なんて考えてみるのも楽しいかもしれませんね!
Haru
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Client : Olersan
Dir. :Victor Haegelin
Production:Wizz
DP :Jérémy Lesquenner
Model Creator : Coralli Grieu
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