みなさん、ご無沙汰しております。

今日はWWFが公開したストップモーション・アニメーション、
“We Can’t Negotiate with Ice”をご紹介します。

  • Director: Yannis Konstantinidis / Marcos Savignano
  • Production: NOMINT (UK)

なんとこちら、全編ホンモノの氷を使うという驚くべき表現方法で作っています。

監督がインタビューで
「氷はストップモーションとは最悪の相性だ。氷が溶けたり欠けてしまうたびに、
もう映像を完成させることは出来ないんじゃないかという絶望感があった」
と語るくらい大変な制作過程だったようですが、

そもそもどうしてこんな大変な方法をあえて選んだのでしょうか?

それは、監督やクライアントであるWWFが本物の氷で表現することにこそ意味があるという強い想いがあったからでした。

数年前にパリ協定で地球温暖化に対する国際的な取り組みとして、世界の平均気温の上昇を2度以下に、
そして可能な限り1.5度以下に抑えるという協定が多国間で結ばれました。
しかし、その後多くの国のリーダーが期限の延長や目標の値を上げることを交渉をしたりと、
なかなか目標を実現するには難しい状況が続いています。

しかしこうしている間にも温暖化によって北極圏の氷が急激なスピードで溶けていき、それが地球規模で
甚大な被害をもたらすこと、そして一刻も早く行動しなければ、氷はどんどん溶け続けていく。

そんな一刻を争うような現状をふまえて、監督は氷でストップモーション映像を作る企画をクライアントに
持ち込んだそうです。

この作品のタイトルである”We Can’t Negotiate with Ice”(訳:我々は氷と交渉することはできない)には、
国の政策はいくら交渉できても、氷が溶けていくことは交渉では止められない。
一刻も早くアクションを起こしましょう!
そんなメッセージが込められているそう。

このメッセージを本物の氷で表現し、さらに氷でできたシロクマが映像が進むにつれて溶けていき、形が崩れていくようにすることで、北極圏の氷も同じように急激に溶けていっているという緊急性を強調できるのでは
ないかと考え、企画意図をWWFにも伝えたところ「是非ともやりたい」と返答があり、実現したそうです。

前置きが長くなってしまいましたが、そんな強い決意とともにいざプロジェクトが始まったそうですが、
そこから何度も問題にぶち当たったそうです…

まず主人公であるシロクマを氷で作るために、3Dプリンターを使って型を作っていったそうです。
その数なんと500体!

型で大枠のフォルムができたら、そこから手作業で1つ1つを細かく削って形を整えていったそうですが、
想像するだけで気が遠くなりますね…。

そのフィギュアの制作だけでなんと半年かかったそうなのですが、
監督が制作の舞台裏をYouTubeにアップしているので、ぜひご覧ください。
どの工程もいかに骨が折れる作業だったかがお分かりになると思います…笑
(リンク:https://www.youtube.com/watch?v=Y7j6UVKnNGU

やっとの思いで撮影にこぎつけたものの、今度は氷が想定以上にハイスピードで溶けてしまい全く
撮影が進まず、最初の7日間は1カットも撮り終えることができなかったそうです…

みんなで頭を抱えたそうですが、それからスタッフで試行錯誤し、氷をいかに溶けないようにするかを
工夫し、半年かけてやっと撮り終えたそうです。

表現方法が斬新で面白いだけではなく、何度も挫折しながらもこの作品を形にしたスタッフとWWFの執念に
驚き、もっとたくさんの人に作品を見てもらえたらと思い、今回ご紹介させていただきました。

監督の英語のインタビューがSHOTSに掲載されているので、ご興味あったら読んでみてください:

https://www.shots.net/news/view/how-to-crack-animating-with-ice

 

それではまた次回お会いしましょう〜!

佐藤