今日は国際ブログには、なんと最近話題の「inozoさん」初登場!

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はい、このアイコンのようにとってもファンキー☆
猪蔵さんと言えば、映像専門雑誌DVJの副編集長を務め、White-Screen.jpの立ち上げ運営を経て、PRONEWSの編集長。もうずっと映像に関って20年…。という常に最先端の映像業界を日本に伝えて来た大ベテラン!

さて、彼が見た映像機材の未来とは??


■変わりゆく世界最大の放送機器展NABshow2012に参加

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会場であるラスベガス・コンベンションセンター

NABshow2012に今年も参加してきました。NAB Showは、NAB (National Association of Broadcasters)主催の世界最大級映像・放送機材展です。映像性製作や放送のために必要な物が一同に会する展示会です。会場はラスベガス・コンベンションセンター幕張メッセの実に6倍以上の大きさの規模で開催されます。その年の映像業界のトレンドを知る上で欠かせない展示会の一つです。

これまでアナログで、オールドスクールなNABも今年は少し違うようです。2012年のコンセプトは、The Great Contents Shift。

その証拠にバナーデザインを見ると、FaceBook、RSS、YouTube、Twitter、ゲーム端末などNABと縁遠いものだった分野のエレメントで彩られています。情報は、スマートフォンでアプリでカバーされ、即日オフィシャルのサイトに動画ダイジェストがラインナップするようになりました。

基調講演でゴードン・スミスNAB会長も「我々は未来のために戦いつづけなければならない。新しいプラットフォームへと進化している。放送事業者は、広告を含めて、マルチスクリーンTVそしてオーバー・ザ・エアーへの明るい市場を見ていくべきだ」と大きく変わるぞと宣言。

NAB自身も新しい時代に合わせデジタル化しようとしています。特に映像の要であるカメラの部分でも顕著です。デジタル化の寄せる波と上手く付き合おうとしています。

カメラで言えば、REDで始まったRAWそしてキヤノンC500のLogなどの収録方法が、時代の潮流となっています。カメラに独自のコーデックを搭載していた時代から、後処理に大きな役割を残す方法が主流になりつつあります。これはパソコンのスペックがあがり、相応のノンリニアの進化も大きいでしょう。そんなデジデジ化した映像の世界。

さて前置きが長くなりました。早速今年のNABを見てみましょう。


■今年のテーマは High Resolution

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今回のNABの大きなテーマ「High Resolution(以下:HR)」です。もちろん画面の大きさである「空間解像度」だけでなく、会場にも多く見られたハイスピードカメラ等「時間解像度」も大きな話題でした。

各メーカーからは、そんなHR実現する提案の数々である注目カメラを中心に見ていきましょう。REDの3D/4KシアターやソニーのF65/4Kワークフローに始まり、パナソニックの4Kカメラモックアップの発表、そしてこの会場を席巻していたキヤノンのEOS C500 /EOS-1D Cなどなどざっと上げただけでもこんな感じ…。

あれ?4Kじゃないの?という声も上がるでしょう。はい、4Kではなく、HighResolutionです。 実際は4Kの文字が会場に大きく躍り出ている訳ですが、実際のワークフローや撮影時の細かい事等具体的なソリューションはまだないのが実情なのです。


■会場は High Resolutionなカメラでてんこもり!

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Blackmagic Cinema Camera

会場をにぎわせたのが、Blackmagic。
これまでのハイエンドなメーカを買いまくり、その価格を1/10で販売しまくり、業界を震撼させまくっている同社は、ここ3年で最大規模クラスのブースを構えるようになったのも印象的。

送り出し的のが、なんとデジタルシネマカメラ「Blackmagic Cinema Camera」を発表。2.5Kの大型センサーを搭載して、¥257,800で発売予定という衝撃!さらにUltraScopeとDaVinci Resolveというソフトウェアが付属してくるのでカメラ自体の値段は推して知るべしなのです。 2.5KRAWまたはフルHD解像度での撮影。対応フレームレートは24/25/29.97/30fps。

同社では、最大13ストップのスーパーワイド・ダイナミックレンジによって、いわゆる「ビデオっぽい」ルックを解消し劇場映画並みのルックとディテールを表現可能になっています。

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4K VariCamコンセプトモデル。コントロールは、スマートフォンで操作!

カメラの雄Panasonicは、4Kのカメラが印象的。ただしモックの中心部に置かれているコントロール部分は、スマートフォンが装着できる様になっています。形状はともかく、あえてバリカムフォン(映像制作に特化したアプリ満載の…)をぜひ作ってほしい。効率化できる物はどんどん取り入れていく事も今後の時代を図る上では重要な事ではあります。

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PalmsHotelの4Kシアターを貸切上映

最後は、CINEMA EOS で息巻くキヤノン。前日にラスベガス市内の4Kシアターを貸し切りで行う勢い。NABに合わせて同社が、映像系の新製品発表の大々的なイベントを行うのは初めてなはず…。4KRAW収録/120fps、10/12bitのCanon Logにも対応したEOS C500と、スチルカメラの最上位機EOS 1DXにCanon Log搭載、4K収録機能を追加したDSLRタイプのEOS1DCの発表とお腹いっぱいの発表。

さらに4Kモニターの発表と、相変わらずの勢い!EOS C500の撮影監督にはJeff Cronenweth (ジェフ・クローネンウェス)氏。「ソーシャルネットワーク」「ドラゴンタトゥーの女」で2年連続でアカデミー撮影賞にノミネートされた注目の人です。(彼の父親は「ブレードランナー」DP,故ジョーダン・クローネンウェス氏)。

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■喜んでばかりはいられない!4Kの罠

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もちろんREDも健在!

キヤノンのカメラにしてもBlackmagicのカメラにしても共通したトレンドは、色はポストで手を入れるという点です。新しいカメラの出現は、色めき立つモノですが、現在の潮流のカメラは後処理必須です。某大手メーカーの技術の人に訊くと、もっとカメラの中で処理できる事は多くあり、そこは、カメラ屋として譲れないというお話も取材中には聞こえてきました。何とも悩ましい所です。

そんな潮流の中、求められるのは、「ポストにおける編集環境の充実」です。特に色。カラーグレーディングに関しては、ポストプロダクションで多くの事ができるようになりました。ファイルベースによる運用と収録をRAWやLOGでの撮影が定番になったと言えます。ビデオの時代では色は収録時に決めていた現場の考え方から、いよいよデジタル現像・色補正をフィルム同様ポストで行う時代へ移行してきたのは前記の通りです。

NAB会場で、4Kの文字が踊るのは大手メーカーとレコーダー、グレーディング関係のブースのみという事実。やはり 4Kは、 映画産業など大型映像を手がける分野の話です。NAB(全米放送局協会)が主催しているせいか、テレビ業界にとって4Kは意外縁遠いものなのかもしれません。今後の技術として関心はあるものの、現実問題としてテレビでの実用は、まだ時期早尚なのかもしれません。

日本においては、フル4Kで全てを処理できる会社は皆無と言えるでしょう(ニーズがまだ無いため)。特に4KRAWやLogの処理を行うには、単に機材を買い揃えただけでは意味がありません。そこに向かい合う必要がある。なかなか奥深い問題です。

そんな事を考えながらNABを通して映像の未来を一足先に体験してきたのでした。