今回はクラブAに所属するオーストリア出身のディレクター、マルコ・カランタリにジュリーがインタビューを行いました!

First take a look at this! “The Doll”

Jules:マルコさんの最新のアイフォンムービー「The Doll」(「人形」)を観ました。ショートフィルム制作のどんな所が好きなのですか?

Marco:今回のフィルムも日本に居る間に撮ってきたアイフォンムービーも、目標としては超大作映画のように観ている人を引き込む世界観を、アイフォンのカメラひとつで作り出そうとしています。物語の本質は予算の有無ではなくて、それが見ている人の心をつかみ、その人が自分の周りの世界を忘れ物語の持つ力に呑み込まれるかというところにあるのだと思うからです。

Jules:それにしても「人形」は怖すぎました!子供には絶対に見せられません。娘はきっともっているすべての人形を投げ出すと思います。どうやって今回のストーリーにたどり着いたのですか?

Marco:確かに僕も子供が居たら 「人形」は見せません。笑
今回の作品のインスピレーションは僕の日本語の先生が教えてくださった、髪の毛が少しずつ伸びていくというお菊人形についての都市伝説です。
西洋の人形は通常可愛くて愛らしい存在なのに比べて、日本の伝統的な人形は少し怖い印象があります。最初は徐々に所有者を支配していく人形を描く予定だったのですが、それよりかは人形自体が魂を持ち人格を与えるという事に興味を持つようになりました。当初は古い、壊れた日本人形を購入する予定だったのですが、友人の母が(なぜか)処分したがっている人形があると聞き、それを使って撮影を始めました。正直撮影中は、僕自身が怖くなることもありました。僕のアイフォンムービーの撮影は、必ず一人で誰の協力もなく行っていくのです。だから夜の部屋であの「人形」とずっと過ごすのはかなり怖い体験でした。

Jules:自転車のかごの中に人形を入れて移動するのは相当変人に思われたでしょうね。誰かに気付かれて、何しているのかと聞かれることはありましたか?

Marco:そのシーンは誰の気にも触れないようにすばやく撮影を敢行しました。
白金近くの高速一号線のとなりの場所を利用したのですが、自転車で大崎から六本木まで自転車で移動するときによく通る場所で、今回のムービーにぴったりだと感じました。東京は映画の撮影地になるような場所がたくさんあります。街全体がひとつのフィルムノワールのセットみたいです。

Jules:アイフォンムービーは全て見せてもらいましたが、ダークさとホラーの要素がどれでも共通しているようですね。でも私の一番のお気に入りは「Dreams」(「夢」)という作品です。これは空港までの道で撮影し、フライト中に編集をして、飛行機のトイレの中でボイスオーバーを録音したと聞きました。本当にすごいですね!

“Dreams”

Marco:この「夢」というのも同じ様な事を題材にしていて、あまりハッピーなフィルムではありません。人々が直面する日常のプレッシャーに対して、目を瞑ってなんとか過ぎ去ってしまうのを待つうちに、ふと目を開けてみると気付けば年をとっていて人生の様々な瞬間を見過ごしてしまっているという内容です。東京に居ると、家と仕事場の間の長い距離を眠ったまま電車で移動している人たちをよく見かけることが、今回のフィルムのインスピレーションです。

Jules:ところで私の家族にプレゼントしてくれた小鳥小屋と一緒につけてくれたビデオを覚えていますか?娘はその中に暮らしている小人が出てきて噛まれちゃうんじゃないかと、小屋を見るのも怖がっていましたよ!

“The Bird House”

Jules:いつか、ハッピーなアイフォンムービーを作ることを考えていますか?

Marco:邪悪な監督マルコですからね。笑
僕はこのアイフォンムービー集を広告の仕事と芸術をつくる欲求のバランスをとる為のはけ口として捉えていて、だからラディカルで新しいものを作りたいと考えています。クリエイティビティはいろんな方向に向けていくことは出来ても全く異なる方針をとることは出来ないと思います。そして僕は人々とその人生の本質を表す様な薄暗がりの、光と影の間を描写するような物語が好きです。美にはいろんな種類があって、それは明るかったり、暗かったりします。
もちろん制作するにあたって一人で作り一人の視点から見せていくことを考えれば、ダークでホラーっぽいコンテンツは限られた中では比較的作りやすいというのもありますね。ただ僕がまた恋にでも落ちれば、ハッピーなアイフォンフィルムが量産されると思います。

マルコさん、深イイお話をありがとうございました!!