Nando’sはモザンビーク・ボルトガル料理で知られる南アフリカのレストランチェーンです。このチェーンは挑発的な広告を作ることでも有名でつい最近のCM ”Diversity (人種の多様性)”はそのナレーションの内容で話題になりました。

CMの最初でナレーターはこの国に住む外国人こそ南アフリカが抱える問題であると言います。この“外国人”にはAfrikaans(白人系南アフリカ人)も含まれ、彼らは煙となって消えていきます。しかし、ブッシュマンや先住民達は“外国人”が来る前から南アフリカに住んでいたためどこにも消えません。そしてナレーターは、“真の南アフリカ人はDiversityが好きだ”と言いNando’sの2つの新メニューの紹介に入ります。

Xenophobia(外国人嫌悪)に対してとても敏感な南アフリカでこのようなCMを作るのはとてもリスキーであり、Nando’sがこのテーマを扱ったことで多くの視聴者は動揺しました。アメリカのように、南アフリカも人口のほとんどがネイティブではなく、異文化同士の衝突は頻繁に起こっています。長く住んでいる人たちは他のグループより優越意識を持ちがちで、特に新しく移民してくる人々には敵対意識を持ちます。2008年の5月にはこうした反移民運動がヨハネスブルグで勃発し、62人の命が絶たれました。

このCMに対するネガティブな意見に対し、Nando’sは「当たり前ですが、このCMの目的は特定の個人や文化に対する軽蔑や批判ではなく、南アフリカの人々に思いやりを持ち、真剣にこの問題に対して考えてもらいたかったのです。考えてみれば、元々はコイサン人(南アフリカの先住民)以外の皆が”外国人“だったわけで、我々はこの異なる人種に対する偏見・社会問題を解消したかったのです。なのでこのCMで伝えたかったメッセージは、この国には多種の人種が混在し、この多様性は言い意味で捉えられるべきであるということ。もし、視聴者がこの多様性を楽しむことが出来れば、Nando’sの多種多様なメニューも気に入るはずです。」と述べました。

なぜファーストフードのCMでこのトピックを扱ったのかと疑問に思う方も多いかもしれませんが、見る人にブランドのインパクトを残すというのは広告の大きなポイントであり、このCMが人々の記憶に残ることは間違いありません。また、このCMがどれだけ商品の購入を促進するのかと思う方もいるかもしれませんが、Nando’sは現在30カ国で展開され、どんどん拡大しておりビジネス的にも成功しています。このようにNando’sのCMの目的は視聴者のよだれを誘発することだけを目的としているのではなく、常に視聴者の予期せぬものを作ることで支持を得ているのです!

また、この”Diversity”はUKのCreative Circleが主催するクリエイティビティを評価する広告賞で2013年のAd of the Year Awardを受賞する等、批判だけでなく高い評価を受けています。

www.creativecircle.co.uk/

いくつか他の話題を呼んでいるNando’sのCMを紹介します。

まずは“Dictators(独裁者)”。これはロバート・ムガベ(独裁者として知られるジンバブエの政治家)が、かつての世界の独裁者と呼ばれたリーダー達(毛沢東、サダム・フセイン、カッザーフィー、イディ・アミン、ピーター・ウィレム・ボータ)と過ごした楽しい時間を思い出すというもの。

“Election(選挙)”のCMではジュリアス・マレマ(人種差別発言や詐欺で知られる南アフリカの政治家)のパペットを使い、ニュース番組の司会者とインタビューを行います。司会者が2009年の国内選挙に対して望むことはという質問に対し、彼は「より多くのNando’sこそ南アフリカに必要なチェンジだ!」と答えます。

“Wives(妻たち)”の中で主役の男性は、一夫多妻主義に対するステレオタイプを払拭するため、南アフリカの男達に多くの女性をゲットすることをすすめます。これは実際に一夫多妻主義である南アフリカの大統領ジェイコブ・ズマを引用したものでした。

個人的にNando’sのCMはとても興味深いものでしたが、これらを見たからといってNando’sの食べ物を買うことに影響を与えるかと言われるとそうでもない気がします。

皆さんはどう思いますか?

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Blog by Ayana