インドの広告における社会的責任
インド人は感情的で、何か心に響くいいものを作れば瞬く間にインド人の視聴数は増え、消費者は虜になります。
ココ最近インドでは国内の社会問題をテーマにした多くのすばらしい受賞作品が作られており、利他的な行動を通じてインドのモラルや社会構造を良くしようという動きがあります。
最近の例でいうとLifebuoyのTVコマーシャルが挙げられますが、この新しいキャンペーンはいろいろな意味でユニークです。
まず、商品を“売る”のではなく、企業の目標を共有しようとしている点。次に、ソーシャルメディアやテクノロジーがより良い社会を築くために何か行動したいという人々を繋ぐ働きをしているということ。企業はこのような人々のコミュニティーに接触し、感動や刺激を与えることで、命を救うためのメッセージを広げようとしているのです。最後に、これは単なる広告ではなく、子供の下痢や肺炎による死の撲滅に向かって個人や専門家、組織をまとめ、違いを生む“行動”を促しているということです。
代理店はLowe Lintas、プロダクションはChrome Pictures、Amit Sharmaが監督を務めたこのCMはインド人のスピリチュアリティーにも触れています。私も小さい頃から多くのインド人が夢が叶った際に様々な方法で神への感謝や信仰心を示す姿を見てきました。このCMでは逆立ちをしながら村の寺院へ向かうことで神への敬意を示すお父さん。
私の親戚にも冬に北インドにある神聖な山を裸足で歩いたり、転げまわったりする人がいました。有名な芸能人を含む多くのインド人の多くが裸足で神社や聖地に足を運びます。これは大昔から伝わるインド特有の精神なのです。
私も小さい頃はよく、神に少しでも近づけるようにと、いとこ全員で女神の神像の周りを1時間くらい巡回したものでした。特に南インドでは宗教や神への信仰が強く、プロダクションデザインやCM内の音楽を聞いて私が育った県を懐かしく思いました。
歌の内容:毎日毎晩私の息子は育っていき、人々の心を幸せで溢れさせてくれる。両親の望みはただひとつ、最愛なる息子がいっぱい遊んで幸せに生きるということ。息子は神からの贈り物で、健康で知的に育ってくれることがただただ幸せで、全ての悲しみを吹き飛ばしてくれる。
話は変わりますが、2012年12月19日、デリーの大学に通う女性がレイプされ死亡する悲惨な事件が起こり、大きな騒動となりました。インドの若者達は約1ヶ月間デモ行進を続け、国民の社会責任や意識レベルを高めようとする活動が行われました。過去インドにおいてここまで若者がこのような活動に熱くなることはありませんでした。皆がこの女性の安全に関する問題に対して言うことがあるはずです。大昔、女性に対する侮辱はマハーバーラタ(女性に対する軽蔑から起きた闘い)を引き起こし、歴史は変わりました。
2013年2月、男性ブランドのGilletteはこの事件に即座に反応し、大きなインパクトを与えました。
“男性よ、立ち上がれ、自分の母、妻、兄妹、娘、友達を守るんだ!”
代理店:BBDO India
プロダクション:Old School Films
監督:Piyush Raghani
次に、最近一番感動し、鳥肌が立ったMumbai Mirror’s I am Mumbai というCMを紹介します。Cannes 2012ではスタンディングオーベーションになるほどでFilm Craft Goldを受賞しました。
Page 11, October 2, 2010:
作家Rohinton Mistryが自分の小説がShiv Sena(インドの政党)によってムンバイの路上で燃やされたことによる不安を示す。”彼らは私の本を燃やし、言葉を燃やした。ただ、私を黙らせることは出来ない”
Page 12, September 29, 2011:
不純物混合牛乳に関して訴える母の物語。
Mumbai Mirror(新聞社)は偶然にもNational Dairy Development Board(国家開発委員会)が所有する牛乳タンカーに不純物を入れている悪徳なネットワークを見つけ出す。
Page 7, August 23, 2010:
貧弱な少年は政府のオフィス前で皆に向かって言います。“私達のベッドはテーブルより小さいんです!一週間で2回しか食事も出来ず、ご飯を食べるところと同じ場所で排泄をしています。”このシーケンスは新聞で報道された町の児童養護施設にある栄養失調の児童に対する虐待を踏まえた内容です。
Page 2, February 12, 2011:
町の景観が醜い政治家のポスターで壊されていくことに対し、興奮した市民は政治家の帰路をブロックしてこう言います、“この町は俺の家だ!政治家のポスターで俺の家の壁を汚すことは許されん!”
代理店:Taproot (電通インドの傘下)
プロダクション:Ramesh Deo Productions
監督:Directed by Abhinay Deo