初めまして!
今年4月からGB部に入ったMarinaと申します:)

コロナ禍に突入してから早いもので一年半以上が経ちましたね。

感染が各国で広がり始めた2020年4月のことを覚えていますか?

この頃ヨーロッパでは世界的にも厳しい外出自粛措置が取られており、
中でもフランスでは薬局や食料品店に行くために1日1時間のみの外出しか許されていませんでした。

今回は、そんなコロナ禍でのロックダウン中のフランスを舞台にした
ショートフィルムを紹介させていただきます。

Title : Masque 19
Script & Director: Marko Roth
DoP: Leo Schrepel
Production Company: Badass

いかがでしたでしょうか?

こちらのショートフィルムは2021年7月にフランスで制作されました。コロナ禍における家庭内暴力がテーマになっており、被害者がパートナーと別れようとするときに経験する心理的な恐怖が表現されています。

女性が精神的、身体的に追い詰められている様子がリアルに描かれており、見ている方もハラハラさせられます。

背景

コロナの大流行以来、家庭内暴力の件数は急増し、特にロックダウンの措置が取られてからはDVの件数が32%増加したという調査もあります。そんな中フランスの薬剤師たちが被害者が密かに助けを求める方法として考え出したのが、 “Masque 19 “です。Masque 19 を合言葉として、薬局の方が警察に通報する仕組みが取られました。

この作品を手掛けたのは、フランスで活躍するドイツ人監督のMarko Rothです。

Marko監督は、ロックダウン中の家庭暴力についての記事を読み、パートナーとの別れを考えている世界中の人たちをサポートしたいと考えました。そんな中、政府やNGOではなく、薬剤師たちが被害者女性を助ける活動を行っていることを知り、そこにスポットライトを当てたいという監督本人の意思で制作がスタートしたそうです。

監督の巧みな映像表現

映像内には、直接的に暴力を振るうシーンは描かれていません。

ストーリーだけ見ると、街を歩いていたカップルが薬局に入りマスクを注文する、という至ってシンプルなものですが、演出面においての様々な工夫が恐怖感を際立たせています。特に

・迫りくる恐怖感を表したSE (Sound Effect), BGM

・俳優たちの演技

・カラコレ、トーン

へのこだわりによって映像に臨場感がもたらされています。

個人的に、薬局を出た後に恐怖と安堵に包まれる女性の表現が凄くリアルに描かれているなと感じました。

実際に監督は、インタビューで「ホラー映画を見まくって、緊張感や不安感を醸し出す様々な映画の手法に没頭した。恐怖感の表現が映像制作の原動力になった」と語っていました。

女性のアザを強調するようなカラーも特徴的です。

映像のその先に

Marko監督は制作に伴い、thebeginning.infoという新しいウェブサイトを立ち上げました。ここでは、世界各国のヘルプラインの番号を瞬時に見つけることができ、世界中どこにいても地域の相談窓口にアクセスすることができます。

リンクは映像の最後にも記載されており、この映像を見て助けを求めていた人が実際に行動を起こすことができる仕組みが作られています。

When asking for help is so difficult, finding it should be easy.

助けを求めるのが難しいときほど、見つけるのは簡単でなくてはならない。

最後に問いかけられたメッセージが心に残ります。

 

——————–

余談ですが、このような映像はどうしたらより多くの女性の目に届くのか、どこのプラットフォームが最適なのかと考える機会にもなりました。

社会問題を取り扱う映像は多くありますが、それが届くべき人に届くように発信することも忘れてはならないと思います。

内容だけでなく、誰をターゲットにして作られているのか、どのプラットフォームで放映されているのかという視点で映像を見てみるとより一層理解が深まるかもしれません。

 

長くなりましたが、ここまでお読みいただきありがとうございました!

 

Marina