カンヌというすばらしくエネルギッシュな場で私が感じたのは社会的責任(SR)の必要性や、どのカテゴリーや度合いであれ社会的に良いことをするという衝動でした。こういったSRの伴うキャンペーンは発展途上国でも力を発揮します。

Samsung Bridge of Life: チタニウムライオンを受賞
2012年の経済協力機構のデータによると、韓国は経済協力機構加盟国の中で、8年連続で最も自殺率の高い国らしいです。1年間での自殺数は約15,000にものぼり、平均して1日約43.5人の命が絶たれている計算になります(2011国家統計局より)。漢江で起きた1090の自殺のうち、17.2%または188の自殺は麻浦大橋で起きました。しかし、2012年9月26日のサムソンのBridge of Life(命の橋)プロジェクト開始から2012年の12月20日に終わりを迎えるまで、麻浦大橋での自殺率は85%も減少。こうしてBridge of Lifeプロジェクトは国内のテレビや新聞のみならず、国外の8つのメディア(Reuters, Voice of America, China TV, Tokyo times等)に取り上げらたのです。また、ソーシャルメディアでもこの麻浦大橋に関する投稿は11,000ものシェアを記録し、サムスン生命保険のブランドイメージは110%も改善されました。
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まず、サムスンは麻浦大橋の手すりに特殊なセンサーとライトを仕込み、橋を渡る人の歩くスピードに合わせて手すりの明かりが点灯するようにしました。センサーライトの上にはメッセージが浮かび上がり、まるで通行するひとに語りかけるような仕組みです。ここに出る約20のメッセージは警告的なものではなく、暖かい歌の歌詞であったり、おもしろいジョーク等、全て自殺を試みる人の不安を取り除くようなものでした。こうして橋の渡り始めから2.2kmも続くメッセージを読み続けていくと、気づかぬうちに橋を渡りきっているという仕組みになっているのです。

Mobile phones as text books: モバイル部門グランプリ受賞
既に先進国ではタブレットや電子ブックが重たい教科書の代わりとして使われています。
しかし、フィリピンでは一番安いモデルでさえ一世帯が月で稼ぐ給料よりも高いというのが現状。

そこで、フィリピンの通信会社smart communicationsが“無数にある使わなくなった古い携帯で新しい教科書を作ってみてはどうだろうか”と思いついたのがプロジェクトのきっかけです。
こうして、Smart communicationsは“教科書を軽く、カンタンに”という目標に向かって走り出しました。
6ヶ月以上にもわたる教科書出版社とのコラボを経て、SMSの仕様に合わせて教科書を160文字に書き直すという作業が行われ、SIMカードに教科書のデータを書き込んでいきました。そして、ついにガラケーは新しい電子リーダーとして生まれ変わったのです。

結果:
まずは最も改善が必要とされているパートナースクールで導入。3ヶ月後、このシンプルでローテクな施策はとても大きなインパクトを残しました。重い学校かばんは半分の重さになり、出席率は95%、テストの正解率は90%に向上したのです。

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Portable water generator: アウトドア部門ゴールド
リマ国立工科大学(UTEC)の出願期間が始まる前、UTECはどうにか学生に本校のエンジニアリングプログラムに興味を持ってもらえる方法はないかと考えました。エンジニアリングで世界は変わるというUTECの信念に基づき、それならまずは我々の町から変えていこうというきっかけで始まったのがこの企画。

願書募集期間に学生の注目を集めること、またリマは世界で2番目に砂漠の多い首都であるがゆえ飲料水の不足が深刻な問題であることを理解してもらうためにUTECと代理店は空気から飲料水を生み出す特別なビルボードを設置。

このビルボードはきれいな水のアクセスがない多くの家族に飲料水を供給し、3ヶ月間で9,450リットルもの飲料水を生み出しました。空気から飲料水を作り出す世界初のビルボードはあっという間に世界中で話題となりTV、新聞、インターネット、ソーシャルメディアでも多く取り上げられました。
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Make the Politicians work: Winning Promo & Activation Gold
エカテリンブルクはロシアで4番目に人口の多い都市であり、道路の状態の悪さではロシア最悪といわれて
ます。そこでura ruと呼ばれる市内情報サイトは政治家達に道路を修復するのも彼らの仕事であるということ
を知らせるプロモーションを実施しました。

概要:
自分達のイメージつくりばかりに気を取られ、道路の問題には全く関心を持たない政治家達・・・。
そこで、知事、市長、副市長の似顔絵と彼らが以前公約していた“道路を直します”という文字を道路に空
いた穴を使って落書きを実行。

結果:
このUra ruの勇気ある動きはロシアで瞬く間に広がり、政治家達もただただ座っているわけにもいかなくなり・・・道路の穴は修復されました。さらにura ruは市民が誰でも道路修復の要請を送れるようにするというスペシャルプロジェクトを実施。このニュースは300のメディアに取り上げられ、ソーシャルネットワーク上で7000回も取り上げられるほどの大きなものとなりました。プロジェクト期間中、ura ruのウェブサイトのアクセス数は以前の2倍に跳ね上がる大成功のプロジェクトとなったのです。
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やはり、世界全体的にこの世をもっと素敵な場所にしたいという気持ちはあり、ここ数年のカンヌもそういった動きにしっかり注目しているのですね。