ご無沙汰しております。
城戸です。

ようやく渡航が可能になり、GB部では海外案件も増えつつある中、
先週はGB部のメンバー数名でベルリンで開催されたCICLOPE FESTIVAL に参加してきました!

CICLOPEが何かというと、世界で唯一、映像の「クラフト」を賞賛する広告祭です。
AOI Pro. からも2つの作品がノミネート、そのうち1つはコレオグラフィー部門でシルバーを受賞しました!
気になる方はこちらから作品をご覧ください。

そして、本日私がご紹介したいのは、
このCICLOPE FESTIVALの最高賞、GRAND PRIX を受賞した作品になります!

まずは作品をご覧ください。

 

Artist: Pharrell Williams , 21 Savage, Tyler, The Creator
Title: Cash In Cash Out
Production Company: DIVISION
VFX Company: Electric Theater Collective (ETC)
Direction: Francois Rousselet

一目見ただけで、相当手が込んでることが伝わりますね。
さて、こちらの作品、どのように制作されたのでしょうか。

パッとみ、ストップモーション??
って思ってるかもしれませんが、ストップモーションだとしたら相当大変そうですよね…
ネットで調べてみると、ストップモーションと言ってる人もいれば、CGと言ってる人もいるし、
Zoetrope? というよく分からない手法を使ったという情報も・・・
結局なんなんだ!なんて、最初は少しイライラしながら、リサーチを進めてました (笑)
しかし、まさにこの混乱状態がこの作品の狙い目だったのです、、!

結論を言わせていただくと、こちらの作品、全てCGで制作されていますが、
できるだけストップモーションに見せかけるように、色々と工夫して制作されたようです。
具体的にどう作られたかというと、1834年に発明された初めてのアニメーション手法、
「Zoetrope」をCGで再現したのです。

さて、Zoetrope、皆さんはご存知でしょうか?
日本語だと「回転のぞき絵」と言いますが、側面に縦にスリットの入った円筒形をしている器具です。
内側の面に個々の静止画が描かれており、連続写真のように並んでいます。
この円筒を回転させ、スリットから反対側の内側を透かして見ると、
絵が次々と入れ替わることで動いているように見えます。コンセプトはパラパラ漫画と同じですね。

そして、このZoetropeを3D化したものでは、3Dオブジェが回転台に配置されます。
回転台を回す際に、オブジェが新しいポジションに着いた瞬間に合わせてストロボで光を点滅させることによって、
連続したリアルな動きに見えるのです。

この3D Zoetropeのコンセプトを、CGで再現したのが、こちらの作品の制作手法です。
作品を細かく見返すと、一つのオブジェが、同じ動きを何回も繰り返していることが分かります。
この2秒間の動きを作るために、ストップモーションと同じように、
若干形を変えたオブジェのコピーを24個CGでモデリングする必要があります。
そして、CGのZoetropeに配置させ、回すと、オブジェが動いているように見えるのです。
言葉だけだと分かりづらいと思うので、以下のBTSムービーをご覧になってみてください。
https://www.instagram.com/p/ChaCMeVqY03/

なんと、オブジェの数は全部で2160個。制作期間は2年近くかかったそうです。
そして、先程も少し触れましたが、
ストップモーションと見せかけるように工夫したクラフトを少し解説したいと思います!

まずは、オブジェのテキスチャー。
ハンドメイドと思わせるために、指紋などを付けているとのこと、、!
また、全てのオブジェが同じテキスチャーだとCG感が出てしまうため、指紋の位置や形など、
一つ一つのオブジェのテキスチャーが若干異なるように制作しているそうです。

次に、カメラワーク。
CGなので、オブジェの間を飛び回ったり、実際は様々なカメラワークが可能ですが、
CGだとバレないように、本物のzoetropeでもあり得るような、控えめなカメラワークを意識したそうです。

最後に、本物のzoetropeだとどうしても不可能な要素が一つ含まれていますが、
皆さんお分かりでしょうか?

正解は、リップシンクです!
リップシンクは同じ2秒間の動きを何度も繰り返すわけにはいかないので、
Zoetropeのシステムに当てはめることが不可能です。そのため、リップシンク用に別のシステムを作り上げ、
その他の動きとは別で操作しているそうです。監督のインタビューによると、リップシンクを残しつつも、
ストップモーション感を失わないことが、この作品の一つの大きなチャレンジだったとのことです。

以上、長くなっちゃいましたが、本当にクラフトが細かく作り込まれていて、
さすがグランプリを受賞する作品なだけありますね。
ちなみにグランプリ以外にも、ディレクション部門とVFX部門でゴールドを受賞してます。

そしてVFXを手掛けたロンドンのポスプロ会社 Electric Theater Collective (ETC) は、
見事に今年の VFX Company of the Year を受賞しました!今後も注目していきたいですね。

以上、最後までお読みいただきありがとうございました。

それでは!