カンヌでのインドの勢いは、それほど大きいものではありませんでした。1990年代にカンヌで表彰された作品はたったの2つ。2002年に入ってからインドの広告会社がノミネートされるようになり、そしてショートリストにも入るようになったのほんのここ10年のことなのです。2004年、Piyush Pandey(Ogilvy Indiaの取締役であり、インド広告界のゴッドファーザーと言われる人です。今年のカンヌの審査員でもあります)がアジア人として始めてカンヌで審査委員長を務めました。それ以降、インドをリードする幾人かの広告人がカンヌの審査員のリストに挙げられてきました。けれどもライオンの獲得数はそう着実には増えませんでした。ある年には上手くいっても、翌年は持ち帰るトロフィーの数が寂しかったり。2011年はインドにとって非常に良い年であり、受賞数も24に上りました。ところが、昨年はまたたったの14個という結果に終っています。
今年、インドからのエントリー数は1,110にのぼり、応募国別では5位に位置しています。日本よりちょっと多いんです!歴史が物語るように、インドは隔年ごとにいい結果を残しているようです。今年も良い年になるのでしょうか?

今年、良い評価がされると私が信じている作品をいくつか取り上げてみました!

Madhya Pradesh Tourism TVC:
Madhya Pradeshはインドの中心に位置する州です。Ogilvy & MatherとNirvanaのPrakash Varma監督による作品です。Holi Festivalにあわせて作られたもので、観光客が地元の若者たちに伝統的な色つきの粉や水を浴びせられています。色が観光客にたどり着くと、それらはKunhaのトラ、Khajurahoの有名な彫刻、ManduのJahaz Mahal、Sanchi StupaとUjjainのMahakal Aartiなど、Mashya Pradeshを代表する観光地にゆっくりと形を変えていきます。Madhya Pradeshが誇る観光地、野生動物、そして歴史的遺産について感謝するという内容になっています。

Nike “Parallel Journeys”
こちらの作品はJWT Bangalore、そして昨年ゴールドを獲得した監督であり、また今年の審査員でもあるAbhinay Deoによって作られました。いつか選手になりたいとがんばる者からインドのクリケットチームに所属する者まで、クリケットに熱狂するインドの若者たちの日常を描きます。個々がどのようにひとつの夢に向かって、グラウンドに赴き、トレーニングを始めるかを追っています。力のレベルの違う選手たちが大事な試合に備えて準備している姿が見られます。CMは最初の1球が投げられるところで、Nikeのタグラインである“Just Do It”と共に終ります。出演しているのはインドクリケットスターであるVirat Kohli, Ajinkya Rahane, R Ashwin, Yuvraj Singh, Gautam Gambhir, MS Dhoni, Irfan Pathan, Virender Sehwag, Zaheer KhanそしてSuresh Raina.

Morphy Richards Juicers “Corruption”
広告会社Contract Advertising、制作会社Code Red、Gajraj Rao監督による作品で、昨年のSpikes Asia、今年のAdfestで話題になっていたものです。どちらでもサウンドデザインでゴールドを受賞しました。カンヌの受賞でハットトリックを達成することが出来るでしょうか。
インドは汚職がはびこっていることで知られていますが、最後の一滴まで搾り取るというポイントを上手くおさえています。

Lifebouy “Help a child reach 5”と、 Gillette “Soldiers for Women”に関しては以前、記事を書きました。
http://www.aoi–‐kokusaiblog.com/?p=15489

Lifebouy “Roti (Indian Bread) Campaign”
イベント:Mahakumbh Mela
Kumbhとは水差しのことで、Melaはヒンズー語でフェアという意味です。1ヶ月半にわたり、ヒンズー教では波に洗われたあとに神々によって運ばれたKembhから蜜が零れ落ちたと信じられている4箇所で、巡礼が行われました。この地球上にこれほど大きい規模で、また激しさで人々が己の解放を求めることなど他に無いでしょう。
このフェスティバルにはおよそ1億人の人が参加し〝世界最大の宗教的な巡礼” ということで記録されました。
2013年2月10日は、Maha Kumbh Melaの中でも最大級の水浴びの日となり、たったの1日でこれまでに無いほど多くの人を集めました。Mauni Amavasya (満月の日)には、3000万人以上の信者と禁欲者が、身を清めました。
アイデア:インド最大級の消費者製品を取り扱う企業と、Ogilvyが100以上のホテルと組んで、”Lifebuoy se haath dhoye kya(手を洗った)?”を書かれたRotis (インド風パン)を提供しました。
少なくとも2人が1つのテーブルをシェアしたことから、HULはこの集まりで250万人以上にアピールしたことになります。