“ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日(2012)”が、2013年のアカデミー賞で監督賞と撮影賞を受賞しました。この映画は素晴らしい才能を持つ2人のフィルムメーカーによって誕生しました。アン・リーは、”ウッドストックがやってくる!(2009)”から, “ブロークバック・マウンテン (2005)”, そして”ハルク(2003)”のように、多様な映画を手掛けてきた事でも世界的に名の知れた監督です。撮影監督であるClaudio Mirandaの代表的な作品としては、”トロン:レガシー (2010)” や”ベンジャミン・バトン 数奇な人生 (2008)”などが挙げられ、特にベンジャミン・バトンではオスカーにもノミネートされました。

アカデミー賞を受賞するのは今回が初めてのClaudio Mirandaですが、彼の最近の作品ではベンジャミン・バトンが若返ったり、ボートにトラが乗っていたり、CGの活用が目立ちます。沢山の有名CMの制作に関わってきた彼ですが、これまでにもCGを多用してきました。

彼が関わった有名CMといえば “Mezzo Leap”

ここ最近の彼の作品とは違い、これらのCMに出てくるのは実際の俳優であり、CG合成も加えられていません。けれどもこのCMはグリーンバックを背景に撮影されているのです。これは、グリーンバックを背景に撮影したもの、CGで合成されたもの、そして完成したものを比べられるビデオです。

このようにバラバラにしたブレイクダウンを見てみると、Claudio Mirandaがグリーンバックを使用した撮影にとても精通していることが見て取れます。どう照明をグリーンバックや俳優に当てれば、綺麗なハーモニーを作りだすことが出来るのかわかっているのです。

彼が手がけたHeinekenのこちらのCMもとても有名です。

ロボットがビールをサービスするような未来を描いた、SF風のCMです。これもおそらくグリーンバックとCGを使用した作品です。興味深いのは、未来を舞台にしている点など、”トロン:レガシー”に非常に似ているということです。登場するキャラクターがほとんどVFXで制作されていると事は”ライフ・オブ・パイ”とも共通しています。
こちらのページ先頭のスライドショーで、俳優Jeff Bridgesの顔を変化させる様子が見られます。

Tron : Legacy

“ライフ・オブ・パイ”の撮影時のトラの様子.
Life of Pi

“ライフ・オブ・パイ”の登場キャラクターに使用したVFXのブレイクダウン.

アメリカン・エクスプレスやハイネケンのCMので有名になった彼も、今やオスカー受賞者です。これまでにCMで度々使用してきたVFXが影響したこともあるでしょう。今回のアカデミー賞受賞はこれまでのCMのDPとして経験の集大成といえるのではないでしょうか。

Written by Esperanza