お久しぶりです!有田です!

最近ネットフリックスで公開されたドキュメンタリー、「ボクらを作った映画」は、様々な名作について当時関わっていたスタッフとのインタビューを行い裏話を語るシリーズとなります。

予算やスケジュールについての苦労、美術の作り方、ロケーションの工夫など、我ら制作の人員として共感のできる話がいっぱい出てきます。

多数の映画を密着した中から私が一番惹かれたのが、「ジュラシック・パーク」でした。

久しぶりに耳にする映画かと思いますので、当時公開された予告編をご覧ください:

スティーブン・スピルバーグが監督をしたこの映画は1989年から制作を始め、最初にたどり着いた課題は、恐竜をどのように作っていくのかというものでした。

当時アメリカのユニバーサル・スタジオにあった「キング・コング」のアトラクションに、アニマトロニクス(ロボット)で作られたコングがあり、スピルバーグがそれを思い出したことで恐竜をアニマトロニクスで作り始めました。最初は全ての恐竜をそれで作る予定でしたが、予算の問題で合計7体しか作りませんでした。

アニマトロニク恐竜を作るのに一番苦労したのは、予想通りのティラノサウルスでした。

ティラノサウルスを作成するだけで、アーティスト9人、彫刻16週間、更に粘土を3トンも必要でした。元々利用していたスタジオの屋根にも入りきらず、わざわざ天井を上に足す必要があり、とても巨大なものとなってしまったようです。

アニマトロニクスと合わせて、ストップモーションの恐竜も作成することになりました。しかし、ストップモーションを使用することで、1つ大きな欠点がありました:ストップモーションは全て静止画で撮られていることで、モーションブラー(ブレ)を撮ることが不可能でした。この理由で、モーションブラーにCGを追加することで、よりリアルな動きが作られました。

インダストリアル・ライト・アンド・マジック(ILM)所属でVFXを担当していた2人のCGアーティスト、スティーブ・ウィリアムズとマーク・ディッぺが、完全にCGで恐竜作るのはどうでしょう?!と、提案しましたが、CGスーパーバイザーのデニス・ミューレンが速攻拒否をしました。

それにより、ストップモーションの恐竜をメインで作ることで進行しました。以下のようなストップモーションのテスト撮影を見ることができます:

しかしILMと言えば、スター・ウォーズや、ターミネーターの名作が思い浮かびますよね??

ウィリアムズとディッぺは、完全CGの恐竜は絶対に作れるでしょう、、と思い、内緒でCGティラノサウルスの動き方を実験し始めました。まずは骨から作り、歩きのテストを作成しました。このテストは、ほんの3秒だけのものでしたが、これを作るのに3〜4ヶ月もかかったそうです。

歩きが完成された際に、タイミングを見てプロデューサーに見せよう!と作戦を作りました。2人はプロデューサーのキャスリーン・ケネディーに、パソコンを通り過ぎていたところでその歩きの動画を再生したら、ケネディーは驚いてとても気に入っていたそうです。

その反応を見た2人はティラノサウルスの肉体まで作れる自信に繋がり、骨だけでなく、しっかりした背景で歩いているリアルな生体の動きを見せていこう!と、が新たなアイディアが浮かびました。その動きは、3秒のものを作成するのに4〜5ヶ月もかかりました。

そしてある日、スピルバーグに見せるストップモーションのスクリーンテストを行った際に、いきなり完全CGのティラノサウルスの映像が流れ始め、スピルバーグが大変興奮したそうです。その後からはストップモーションの製作を止めることになり、CGとアニマトロニク恐竜のみで進めることになりました。

先程お見せしたキッチンのシーンが、以下のように変わりました:

皆さん、見抜けられましたか?

実はこの恐竜、半分人間の入った恐竜の人形カットと、CG恐竜のカットが両方使用されています。
恐竜の足元のアップや、食器にぶつかって落とされた部分などが実際の人形となり、カウンターの上に飛び上がる時や、顔の細かい表情と動きは全てCGです。この映像の作り方を映画の全ての要素に与えることで大ヒットになり、皆さんが今知っている名作となりました。

今となってほぼ全て映画やCMでデジタル映像制作が毎日流れているかと思いますが、当時では目新しかったVFXが、ジュラシック・パークが生き物を本物のように見せたことで、常識的に使用されるきっかけになりました。

当時の著者、ジョディ・ダンカンがこう語りました:「初めてブラキオサウルスを見たときのシーンが、映画の中で最初に登場する恐竜です。あのシーンで出演者が思っているのは、『科学はなんて素晴らしいことを成し遂げたのだ』。そして私はオーディエンスとしてこのシーンを見て、『科学はなんて素晴らしいことを成し遂げたのだ』と、思いました。」

初めて観た時が覚えていないくらい幼い頃から好きな作品ですが、制作についての話を知ったら、もっと好きになりました。

皆さんも是非、「ボクらを作った映画」をご覧になってください!